日本の底力を世界に見せつけた零細企業「由紀精密」の挑戦

 

パリ航空ショーに社員らと参加

こうして由紀精密は品質と製品への信頼で顧客の評判は上昇し、リーマン・ショックがあっても売り上げは減らなかったという。営業社員を持たなかったが、ウェブサイトで企業を紹介し、視野を世界に求め社員にもその意識を共有するように求めた。そして魅力的な企業であることを追求し、いまや連携している協力企業は50社を超える。パリ航空ショーにも出展し、社員の半数以上が一緒に行くことで「小さくとも世界企業」であることの実感を共有し、30年後の「100年企業」を目指す。

パリ航空ショーは世界中から13万8,000人のビジネス来場者があり、19万3,000人の一般来場者、2,000社以上の出展者、140機以上の航空機が集まり毎日デモンストレーション飛行がある。普通なら恐れ多いと躊躇してしまうところだが、ウェブサイトを見ると申し込みフォームがあり規定の料金を所定口座に振り込むだけで、相違点は申し込みフォームが英語で、通貨がユーロぐらいであることだけだった。

社員も1~2人を除くと語学に堪能な人物はいなかったが、全員が興奮し燃えていて、その後の企業のモチベーション向上につながった。「ものづくりは世界の共通言語で、職人同士は製品を通してコミュニケーションが出来る。まずは挑戦してみることだ。挑戦すれば、全員が次から次へと考え、モチベーションをあげていくことが自分自身の経験でも実感できた」と3代目社長は語る。

3代目の正人社長は42歳だが、見た目はまだ30代のように若々しく、とても世界を股にかけ動きまわっているようにはみえない。従業員の約半分は女性で多くはエンジニアである。2010年に欧州進出の5年計画を立てており、2011年・パリ航空ショー出展、2012年・現地オフィス展開、13年・現地法人立ち上げ、2014年・地元企業のM&A、2015年・現地工場稼動──とした。こうした計画の中で2011年にはイタリアの人工衛星メーカーから初受注が決まる。

商社、外資メーカー、日本の支社を通さず海外から直接受注がくるなどは想像もしなかったが、こうして一社依存体制からも徐々に抜け出て変化していったという。

大坪正人社長など、ものづくり中小企業のアイデアで2012年に全日本製造業コマ大戦が横浜で行なわれた。直径250ミリメートルの土俵上で直径20ミリ以下のコマを指で回し、外にはじきだされずに長く回っていたコマが勝ちという単純なルールだ。形状、材質に制限はなく、いわば私達が戦後遊んで流行していたベーゴマ大会のようなものだ。しかしいかに長く回り続けられるか、衝突してはじき出されたら負けなので、参加者は頭を絞って強いコマ作りに精を出す。

第1回大会には予選を勝ち抜いた16チームが全国から出場したが、年々参加者が増えているという。由紀精密では、SEIMITSUコマを1個864円で販売したところ、あっという間に数百個単位の注文が入ってきたという。

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