それから10年が経ち、「専門家」が僕のビジネス案をなぜ完全否定したかがよく分かります。
日本における飲食業という文脈に、パクチーはありえなかったのです。僕が焼鳥屋から商売を始めていたら、少し小賢しくなって、パクチー屋には手を染めなかったことは確信を持って言えます。でも僕は何も知らなかったのです。「立地産業」という言葉は勉強しましたが、家賃をたくさん支払う余裕も勇気もなかったのでそのセオリーは無視しました。2階に店舗を構えたら目的来店でも見逃されてしまうことなど想像すらしませんでした。10年間自分の店にたくさんのお客さんを迎え入れ、他店舗の事例も見聞きしました。その上で10年前の意思決定を振り返ると鳥肌が立ちます。
「変化を起こす」にはパッションが必要です。「行動を起こす」には勇気が必要です。
常識や流れを理解しすぎていると、その勇気が引っ込んでしまうかもしれません。経験を積めば慣れることはできますが、経験を積んだからと言って成功するかどうかは別ですし、経験が奇抜な発想を阻害するかもしれません。未経験であること、知らないことは、パッションを行動に移すには最高の条件だと思います。
新しいアイデアを思いつきそれに興奮したら、上司に意見を求めるべきじゃないし、専門家に相談すべきでもないし、経験を積むまで後回しにすべきでもないし、家族の同意を取り付けようとしてもいけません。イノベーションの第一歩には他人の「いいね!」は不要なのです。(つづく)
image by: Shutterstock
ページ: 1 2