（3）について。それが安倍の心身衰弱の問題とも繋がっていて、安保法案成立で燃え尽きてしまう可能性もないとは言えない。仮に8日に無投票再選が決まっても、自民党の誰もが内心では「安倍では来夏参院選は戦えない」と思っている──ということは「どういうタイミングで安倍を引き下ろすか」というシナリオが動き出す訳で、東京五輪はもたつき、辺野古はデッドロック、アベノミクスは破綻、対露中韓外交は行き詰まり、拉致問題も空振り……という中で針の筵の日々が続き、それでも粘りに粘って参院選まで辿り着いても、自民党惨敗、安倍退陣となる可能性が濃厚で、名目改憲など夢のまた夢であることが確定的となった。つまり、名目改憲でも96条先行改憲でも挫折して取り敢えず解釈改憲に踏み出して、来年参院選で3分の2の議席を得て再び名目改憲へ、という安倍の構想はすでに破綻したのである。
（2）について。野党はもちろんあくまで安保法案の時間切れ廃案をめざす。会期は9月27日までだが、19～23日の大型連休があるので事実上は18日が会期末となる。与党は16日に参院委員会で採決し、同日中もしくは遅くとも17日に本会議で採決に持ち込む構えだが、野党は内閣不信任決議案を提出するなどして徹底抗戦し、国会外では連日10万を超えるデモ隊が押し寄せて騒然となるだろう。参院が混乱して採決に入れない場合、14日を過ぎると「60日ルール」が適用可能になり、衆院に持ち帰って3分の2で再可決・成立させることは出来なくはないが、参院与党にはそれへの強い反対があり、世論との関係でも、「参院で十分審議していないものを力で押し切った」という反発がなおさら強まって炎上する。なお、野田が立候補して総裁選になった場合は、野党が「総裁が替わるかもしれないのに審議はできない」と審議拒否に出る可能性があり、そうすると20日の投開票まで事実上の休会となり、会期末まで平日は2日間しかなく、「60日ルール」で押し切るしかなくなる。
（4）について。沖縄防衛局が海中に投入した大型コンクリート・ブロックが岩礁破砕許可に違反してサンゴ礁を破壊していないかの沖縄県による潜水調査は、早ければ9月12日に終了し、ほぼ間違いなくクロの結論が出て、県は破砕許可を取り消す。国会混乱の最中に官邸がこれに対応するのは難しいので、休戦期間はさらに延長されるだろう。
image by: 自民党
『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者／高野孟（ジャーナリスト）
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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