任天堂株、この8ヶ月で2倍に。復活の「スイッチ」が入った要因

 

全世界で大ヒットを記録する新型ゲーム機「Nintendo Switch」

この任天堂の長い低迷期に終止符を打つ決め手となりそうな新製品が「Nintendo Switch」。

2017年3月3日に発売が開始された「Nintendo Switch」は、当初予定していた2016年のホリデーシーズンでの投入が間に合わなかったこともあり、1カ月間で200万台と若干控えめな目標をベースにマーケティング戦略が立てられていました。

ところが、発売を開始すると瞬く間に人気に火が付き、3月だけで270万台を出荷し、計画を30%以上も上回る予想外の展開に。

この「Nintendo Switch」の人気は衰えることなく、6月までの3ヶ月間で出荷台数は470万台に達し、発売から半年以上経った今でも品薄でなかなか手に入らない状況が続いているのです。

ここで、全世界で1億台以上が売れ、任天堂で最も成功を収めた据え置き型ゲーム機「Wii」と比較してみると、「Wii」は発売後4ヶ月で584万台の出荷を記録していますが、「Wii」が発売されたのは2006年11月のホリデーシーズンであり、「Nintendo Switch」の場合はホリデーシーズンを含まず3ヶ月で470万台を達成していることを考えれば、非常に高いレベルで普及が進んでいることをうかがわせます。

また、「Nintendo Switch」の売れ行きは、これまでの任天堂のゲーム機とまったく違った動きを見せているのも特徴的です。これまでのゲーム機では、まずはファミリー層に浸透してから大人のゲームユーザーに広まっていくという流れでしたが、「Nintendo Switch」はいきなり全年齢のユーザーが購入するなど、明らかに従来とは違った売れ方をしているのです。

果たして、この「Nintendo Switch」の「ロケットスタート」による復活への狼煙はどのようにして上げられたのでしょうか?

もちろん、最新のゲーム専用機が、税抜きでわずか2万9,980円というハードの儲けを度外視した価格設定もさることながら、他にも様々な要因が隠されているはずです。

今回は任天堂の「Nintendo Switchを爆発的ヒットに導いた戦略の背景を検証していくことにしましょう。

1 SNSで若年層に幅広くアプローチする

まず一つ目に注目すべきは、若年層に大きな影響を与えたソーシャルネットワーキングサービスによる拡散でしょう。中でも「ゲーム実況」と呼ばれる動画配信の影響力は大きいと思われます。

ゲーム実況では、プレイヤーが実際にゲームをしながらその模様をYouTubeやニコニコ動画などで配信していきます。

特に、ニコニコ生放送などでは視聴者がゲーム実況中にコメントできる機能があり、視聴者参加型のコンテンツとして大いに盛り上がりをみせています。

たとえば、500万人を超える登録者数を抱える人気YouTuberのHIKAKIN氏も数多くの「Nintendo Switch」のゲーム実況の動画を配信していますが、それぞれ数百万から1,000万近くの再生回数があり、かなり多くの視聴者に影響を与えていることがうかがえます。

マーケティングの心理テクニックの一つに、顧客が実際に使っている様子を見せるという手法がありますが、ゲーム実況はまさにこの心理テクニックに則った販売手法といえるでしょう。

たとえば、FacebookなどのSNSで友達がレストランでおいしそうな料理の写真をアップしていれば、それが食べたくなった経験のある方は多いと思います。また、好きな芸能人が身に着けているアクセサリーや使用している日用品をインスタグラムやブログなどで見かければ、自分も使ってみたいと思うはずです。

同じようにいつも見ている動画配信者が「Nintendo Switch」をプレイしている様子を見れば、自分も「Nintendo Switch」が欲しくなるのは、ごく自然な人間の心理といえるのです。

事実、任天堂もこのゲーム実況の売り上げに対する影響力の大きさを考慮して、禁止するのではなく、推進する方向に舵を切っています

本来、ゲーム実況は著作権者の許可なくプレイ動画を配信することは違法ですが、任天堂は2017年9月にニコニコ生放送を運営するドワンゴと任天堂の著作物の利用に関する包括許諾契約を締結。

この契約により、ゲーム実況者は任天堂の数多くの人気ゲームを個別の許可を取ることなしに実況が行えるようになったのです。

今後は益々魅力あるゲーム実況が増え、購買意欲を刺激される視聴者が増えて売り上げアップにつながっていくというシナリオも十分に考えられるでしょう。

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