東京モーターショーはこのままだとヤバい。プロが感じた「限界」

 

欧州に根付いた見本市文化

見本市=メッセが日本で知れ渡るようになったのは1989年から東京モーターショーの会場にあてられた幕張メッセ以降と考えていいが、ドイツの歴史的な経緯に育まれた見本市文化の凄味は日本の全展示面積のほぼ10倍に近い341万平方メートル(日本は37万平方メートル)を有し、世界最大のハノーバー(46.6万平方メートル)やIAAのフランクフルトメッセ(36.7万平方メートル=第3位)をはじめ、トップ10に4つのコンベンションセンターが名を連ねている(世界のトップ5はこちらに)。

欧州における見本市は、OEMメーカーを頂点にサプライヤーが系列を成して垂直統合される日本とは異なり、OEMメーカーとメガサプライヤーが対等の関係を築く水平分業の形を取るところから発達したとされる。古代に生まれ、中世からトレードフェアとして発達した見本市の歴史的背景によるものであるであるようだが、ドイツでは自動車以外の主要産業でもメッセは盛んに催されている。

イタリアでは毎年4月に行われる世界最大の見本市として知られる国際家具見本市ミラノサローネが有名だ。日本の自動車メーカー/ブランドとしてもLEXUSが2005年から出展を始めており、私はLFAのコンセプトモデルを展示したその場に立ち会っている。他にもフランクフルトと隔年開催のパリ・ポルトヴェルサイユEXPOを有するフランスやスペインも日本とは桁が一つ違う総展示面積を有し、欧州の主要国としてはもっとも少ない英国でも日本の2倍のフロア面積(70万平方メートル)を用意する。

日本ではとかく槍玉にされがちな箱物行政だが、経済の推進役を務める製造業が市場のグローバル化によって企業活動が国境を軽々と超えるようになった現実に対応するインフラが整っているか。コンベンションセンターのスケールを問題視すると誤解する向きも多いかもしれないが、国内外の商品・製品に始まり部品や周辺技術など、自動車を始めとする工業製品の裾野の広がりは果てしない。

いかにインターネットが時間と距離を無にしたとはいえ、現物を触れるに越したことはない。東京モーターショーは日本国内で売られるクルマやバイクの展示が基本。国外で売られる日本車や欧米を中心とする外国車を網羅する必要には迫られていないが、インターネットがもたらした情報化がこれまで以上に現地現物の重要性を高めたのもまた事実。

手狭な日本のコンベンションセンターでは、日本の自動車産業が世界市場に向けて展開しているクルマのショウケースにはなり得ず、グローバルに展開している魅力的な海外ブランドを呼び寄せるスペースにも事欠く。東京ビッグサイトにフランクフルトメッセや上海国家会展中心に展示されるメーカーの車種やサプライヤーの部品をすべて網羅することは土台無理というものだ。

現状での超ドメスティックな出展内容では、いくら『BEYOND THE MOTOR:世界を、ここから動かそう』と力んでみたところで、掛け声だけが虚しく響く感が否めない。その現実に目を背けて総入場者数に一喜一憂するのはナンセンスの極みというべきだろう。

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