東京モーターショーはこのままだとヤバい。プロが感じた「限界」

 

コンベンションセンターにはっきり表れている中国の急成長

次に、東京ビッグサイトは日本最大のコンベンションセンターだが、グローバル視点では世界の何番目ぐらいの展示面積だろう。多くの人が幕張メッセの方が大きいと思っているが、幕張は7.2万平方メートルで国内2番目。その事実に驚くが、世界の30位いや50位にも入らないと聞くと信じられないという表情になる。

しかし事実なのだ。日本展示会協会(2016年現在)のランキングによれば、東京ビッグサイトは世界第68位同協会のランキング一覧を見ると世界第3位の経済大国に似つかわしくないインフラの不備と感じる。

国別の全展示面積では経済大国の第1位、2位アメリカと中国が占める。アメリカのコンベンションセンターはシカゴの24.2平方メートル(第10位)が最大で、個別の規模はそれほどでもないが全米の主要都市に数多く点在する。

中国21世紀に入ってから急成長した経済と軌を一にするようにコンベンションセンターの充実が進む。私が初めて中国の国際自動車ショーを取材したのは2007年の上海からだが、当時竣工から6年目の上海新国際博覧中心(SNIEC)は20万平方メートルのV字配置された巨大な東西2棟に北棟が加わる巨構に驚かされた。

隔年開催の北京国際自動車ショーの中国国際展覧中心はSNIECの半分のスケールだが、毎年開催の広州国際自動車ショーの広州国際会議展覧中心は訪れた2008/2009年当時アジア最大の33.8万平方メートルで圧倒的な存在感を示した。

さらなる驚きは、2年前の上海国際自動車ショー。プレス申請の際に開催地の変更が記されていた。それまでの浦東新区に位置したSNIECから虹橋空港最寄りの上海市西部に新設された国家会展中心(NCEC)に変えて開催するという。

SNIECが、ドイツのミュンヘン見本市会社(Messe Muenchen GmbH)と地元資本合弁による上海新国際博覧中心股 有限公司という民間企業が施工と運営に当たっているのに対し、NCECは北京中央政府と上海市政府が共同で建設された公営施設。総建築面積が147万平方メートルという単一建築物としては世界最大屋内展示面積としても世界第2位に躍り出る壮大な規模を誇っている。

すでに民間のSNIECがあり、wifiなどの設備投資の要求に応えた矢先の国営施設への移管。NCECが余剰生産が懸念された鉄鋼やセメントなどの建築資材の在庫削減を意図したと見られる国策事業と見られる中、民業を圧迫してでも開催を強行する中国流には驚きを禁じ得ない。

上海は空路で日本国内の沖縄那覇と距離的にもそう変わらず、航空券もかえって安いほど。興味ある方は一度観光をかねて訪ねてみるといい。SNIECがドイツの見本市会社が深く関わっていると述べたが、見本市=メッセというドイツ語で語られるように見本市はドイツのお家芸。今世紀初頭の中国政府による国営企業との合弁事業にリスクを取って進出したことが現在の中国市場におけるドイツメーカーのシェアに繫がっているが、それは自動車の生産/販売に留まらずモーターショーのインフラ整備から運営に至るまでを押さえた結果でもあるのだ。

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