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あなたのお宅もヤバいかも。年金の「第3号不整合記録問題」とは

配偶者が厚生年金や共済組合に加入している専業主婦(主夫)などは第3号被保険者となり、国民年金を納めなくとも納めたものとして将来の年金額に反映されるというメリットがありますが、夫が自営や無職となって自身も第1号被保険者となった場合、変更届を出さずにそのままにしていたらどうなってしまうのでしょう。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』で著者のhirokiさんが、その対応について詳しく解説しています。

過去に変更届を忘れて年金記録が第3号被保険者のままになってた人への対応(第3号不整合記録問題)

平成19年頃に年金記録漏れ問題が発覚し、消えた年金問題として大きな問題となりました。被保険者と受給者合わせた約3億件の記録のうち5,000万件の記録が誰のものかわからないという衝撃的なものでした。

これの直接の原因は年金記録加入者の氏名、生年月日、性別、住所等について正しい読み方、結婚や転勤などを含めて常時正確に把握する事を軽視したものでした。年金というのは本人の請求により発生するものなので、その際に本人の申請で請求時に間違っているところを訂正すればいいという考え方が引き起こしてしまったものといえます。今なお2,000万件ほどの記録は未解決のままとなっています。

その時に誤った年金記録になった状態も明るみに出たんですが、それが「第3号不整合記録」っていうものです。今回はその件で。見ただけで、もうイヤ! ってなりそうな用語ですよね(笑)。

僕はよく第3号被保険者という用語を使いますが少し復習するとまず、サラリーマンや公務員(この人達を国民年金第2号被保険者という)の扶養に入って専業主婦(主夫)とかの人は第3号被保険者となって、国民年金保険料(平成29年度月額16,490円)は納めなくても納めたものとなって将来の老齢基礎年金に反映します。

で、この第3号被保険者になれるのは配偶者がサラリーマンや公務員みたいな厚生年金や共済組合に加入して第2号被保険者になってる時だけなんですよ。もし、例えば夫が民間企業退職して自営業とか無職になると厚生年金ではなくて自ら国民年金保険料を納める第1号被保険者となります。そして、その時に今まで第3号被保険者だった妻は第3号被保険者じゃなくなるから、市役所に自分自身も第3号被保険者じゃなくなって自ら国民年金保険料を納める第1号被保険者になる。

ところが、市役所に第3号被保険者から第1号被保険者に変更する為の届け出をやらなかった事で、そのまま第3号被保険者として、国民年金保険料を支払ったものとして記録が間違ったままになっていた事が発覚したんですね。これが第3号不整合記録。本来なら第1号被保険者になってるはずが第3号被保険者になったままであったというもの。

つまり、下記のア~ウのような時は第3号被保険者から第1号被保険者になるから、市役所に届け出なければならない。

ア.第2号被保険者が退職したり、65歳になった時。

イ.第2号被保険者と離婚した時。

ウ.第3号被保険者の年収が130万円以上になった場合。

こういう時は扶養から外れるから第3号被保険者から第1号被保険者の手続きを市役所に届け出て自ら国民年金保険料を納めなければならないのに届け出されていなくて、そのまま第3号被保険者になったままになっていた。不整合があったのは被保険者と既に年金受給者合わせて100万人くらい。

で、この人達はもちろん正しい記録に変えないといけないんですが、当時の政権を取っていた旧民主党の判断でこれは第3号被保険者でなくなった場合は第1号被保険者になる手続きを市役所にやらなければならない周知が足りなかった行政の責任だからそのまま第3号被保険者だったものとして扱おう! と一旦はなったんです。

しかし、昭和61年4月以降第3号被保険者制度が始まって、第1号被保険者に変わった人は2,000万人くらい居てそのほとんどの人はちゃんと市役所に届け出ていたんです。となると、本来なら第3号被保険者じゃない記録をもうそのままにして年金を出すなんて不公平ですよね。

というかそんな事したら、ちゃんと国民年金保険料納めた人にとって納得いくわけない。だから平成23年11月にこれはやっぱ訂正しようとなったんです(当然ですよね)。既に間違った記録で老齢基礎年金を貰ってる人も減額する。

で、記録訂正はするんですがそこで問題が出るわけです。間違ってる記録である第3号被保険者記録を第1号被保険者に直すと、保険料を納める時効である直近2年1ヶ月以内を超えた期間は未納になってしまうんですね。まあ、ちょっと混乱する話なので事例を。

1.昭和33年11月21日生まれの女性(今は59歳)

20歳になる昭和53年(1978年)11月から平成2年(1990年)3月までの137ヶ月は国民年金保険料を自ら納めた。平成2年4月からサラリーマンである夫の扶養に入って第3号被保険者になる(保険料支払わなくても支払ったものとなる)。しかし、夫が平成17年3月いっぱいでサラリーマンをやめて4月から自営業始めたため夫は第1号被保険者になる。

となると、平成17年4月からは妻はサラリーマンの夫の妻ではなくなるので、第3号被保険者ではなくて市役所に届け出に行って妻も第1号被保険者になり、月々の民年金保険料を納めなければならない。しかし、届け出をやらずにそのまま平成25年3月まで第3号被保険者になったままだった(平成2年4月から平成25年3月までの276ヶ月の第3号被保険者期間)。

本来なら第1号被保険者として国民年金保険料を納める期間である平成17年4月から平成25年3月までの96ヶ月が第3号被保険者のままだった。よって、第1号被保険者期間137ヶ月+第3号被保険者期間276ヶ月=413ヶ月にはなりますが、第3号被保険者期間276ヶ月の内96ヶ月を第1号被保険者に直さないといけない

例えば平成25年4月に本来の正しい年金記録に戻された。つまり、平成17年4月から平成25年3月までの第3号被保険者期間を第1号被保険者期間に直す。この第1号被保険者期間の分は自ら保険料を納めてもらわなければならない期間。で、国民年金保険料を納めようっていっても直近2年1ヶ月までしか時効で納められない

よって平成25年4月に直近2年1ヶ月の時効内(平成23年3月まで)の国民年金保険料を納めてもらっても、平成17年4月から平成23年2月までの71ヶ月は未納期間になっちゃうわけですね。この71ヶ月を「時効消滅不整合期間」と呼びます(昭和61年4月から平成25年6月までの期間に限る)。

だから平成25年7月1日施行の法改正により、時効消滅不整合期間による未納期間で将来の年金額が下がってしまう人は、平成27年4月から平成30年3月31日までの有限措置にて直近10年以内の時効消滅不整合期間の未納期間の保険料の追納をしてもらうわけです。この追納のお知らせは既に該当者に平成27年に送ってる。

しかし、その前にこの71ヶ月の時効消滅不整合期間による未納期間をカラ期間にする届け(特定期間該当届)をやってもらいます←追納の場合はまずこの手続きが必要。特定期間該当届を出す事により、71ヶ月は未納期間ではなくて特定期間というカラ期間になります。

カラ期間とは(日本年金機構)

カラ期間というのは年金受給資格期間の10年以上のうち、保険料納付済み期間+保険料免除期間+カラ期間≧10年以上のもの。カラ期間にすればとりあえず年金受給資格期間に組み込まれるから受給権確保にも繋がる

71ヶ月間の未納期間を特定期間というカラ期間にした上で、追納をやってもらいます。追納をやらないなら年金額に反映しないカラ期間になるだけ。とにかく時効消滅不整合期間がある人はまず特定期間該当届を出してカラ期間にしてもらって年金受給資格を確保する。

追納は過去10年以内ですが、既に60歳超えてる人は50歳から60歳までの10年以内の時効消滅不整合期間までが追納期間となる。この追納が平成30年3月31日までなので追納したい方はそろそろ期限が迫ってますね^^;。

第3号不整合記録があった人の保険料の追納について等(日本年金機構)

じゃあ次に記録を訂正した時に既に65歳以上で老齢基礎年金を受けていた場合はどうなるのか。

平成25年7月1日法改正時点で既に老齢基礎年金受給者であり、平成25年7月1日以降に記録訂正された人(特定受給者という)については記録訂正で不整合の第3号被保険者期間から第1号被保険者期間となって、時効消滅不整合期間による未納期間が生じても平成30年3月分までは今まで通りの年金額が支払われます。つまり、平成30年4月からは本来の記録訂正分での年金支払いになる。ただし、減額率は最大10%

例えば今まで、400ヶ月分の老齢基礎年金649,416円(←779,300円÷480ヶ月×400ヶ月)を受けていたとします。平成25年8月に過去80ヶ月分の時効消滅不整合期間が判明した。この80ヶ月は追納しないとする。平成30年3月までは老齢基礎年金649,416円が支払われる。平成30年4月からは時効消滅不整合期間80ヶ月を除いた320ヶ月分の老齢基礎年金として支給される。

となると、779,300円÷480ヶ月×320ヶ月=519,533円に減額となるが、減額率は最大10%までなので649,416円-649,416円×10%=584,474円の支給が保障される(9割保障)。だからちょこっと国民年金保険料を追納しても増額しない場合があります。なお、追納した方がいいのかどうかは年金事務所にて説明されますので、その上で追納するかどうかを決めましょう。

※補足

既に障害年金や遺族年金を受けている人で時効消滅不整合期間が判明しても、未納期間として扱わずに保険料納付済期間として今まで通り障害年金や遺族年金は保障される。ただ、時効消滅不整合期間を追納しないとなると老齢基礎年金が低くはなりますね。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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