アメリカとドイツに見る中国戦略の歴史的共通点
ドイツの自国市場は約370万台と日本に次ぐ第4位のスケールだが、欧州は実質自国市場の色彩が濃い。ドイツにとって中国市場は過去10年で倍増の生産規模を実現した成長エンジンそのもので、万難を排してでもシェア拡大を譲らぬ意志を感じる。
シェアが10%に満たないアメリカ市場にディーゼルで勝負するギャンブルが打てたのも稼ぎ頭の中国の成功ありき。日本は口コミによる評判が有効な中国の消費者にとって信頼される商品市場という評価から、そこで機能している日本メディアを優遇しブランドイメージに関わる高評価を引き出すことに神経を使う。
ドイツメーカーが中国市場重視に転じたタイミングに、日本の子会社のインポーター広報に日本メーカーのPRセクションからのヘッドハンティング組が登場したのは偶然ではないだろう。VWの展開は明らかに中国市場を向いたブランド戦略の一環であり、アメリカにおいてジャーマンプレミアムとは明らかに異なる量販ブランドの立場に留められたVWにはならないように配慮が徹底された。
アメリカで発覚したディーゼル不正は、技術的信頼に胡座をかいた奢りの結果だが、即座に首脳陣が退陣したのは深謀遠慮の結果だ。半分は不正内容を知るからこその責任を取ったもので、残りの半分は後任者に大胆な方針転換を取らせることで再起を図らせる狙いがあったのではないか。
アメリカにおけるドイツ車のシェアは全体でも10%に及ばず、VWは2%に留まる。
プレミアムの他ブランドとは異なり、世界の量販ブランドとしてはあってなきがごときレベル。幸いというべきかVWディーゼルゲートは中国においては情報展開されず、目に触れやすい日本メディアの追求もいつの間にか立ち消えとなっている。
翌2016年には手の平返しとも言える『EVシフト』が発表され、秋のパリサロンではVWがIDコンセプト、ダイムラーがコンセプトEQと揃って具体的なビジョンを明らかにした。そこにはアメリカ市場で要求されるZEV規制対応への含みという必然と、中国が打ち出したZEV規制に倣うNEV規制で宿敵と化している日本勢への牽制が透けて見える。
そもそも電動化技術に関しては1990年代から一貫して日本がトップランナーであり、EVにはじまりシリーズ/パラレルのHV、FCVとエネルギーミックスを念頭に多様のかぎりを尽くして現在に至る。
私のモノの見方は不十分かもしれないが、自分の足で動きこの目で見た上で考えた結果の意見である。まだまだ日本にはチャンスがあり、世界に胸が張れるコンセプトが提示できる余地がある。それを形にすることが目下の進むべき道と心得ている。(つづく)
※この記事は、有料メルマガ『クルマの心』第274号2018.2.20配信分から一部を抜粋したものです。全文をお読みになりたい方は、初月無料のメルマガをご登録の上、バックナンバーをご購入ください。
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