エクサスケール・コンピューティングによってもたらされるプレ・シンギュラリティの変革は、まずエネルギー問題の解決から始まる、と著者は断言する。そして安全性が十分に担保された遺伝子編集技術と、高度に進化した生産・栽培・養殖・収穫技術によって食糧問題の解決と、自然環境の保全、そして極めて重要な生物多様性の維持にも大きく貢献することになる、という。
「衣・食・住に関する問題はそのすべてが解決され、生活必需品のすべては事実上無料で『フリー』と呼び得る状態での入手が可能となるのだ」「人類は生活のために働く必要性から、有史以来、初めて完全に解放される日を迎える」「プレ・シンギュラリティの変革において、我々は二つの“ふろう”、すなわち「不労」と「不老」を、なんとほぼ同時に手にすることになる」、という。
「簡単にまとめれば、ある時点で次々と起こるその変革の連鎖は、同時多発的に生じるようになり、やがて沸点とも呼べる相変換点に到達し、我々がこれまでの現世人類の25万年史と呼んできたものとは完全に異なる種類の時代と世界をつくりだす、ということになる」とはすごい話になってきた。ついて行けぬ。
2020年から2030年にかけて、膨大な研究開発の成果が生み出されるという。各種の発電効率の大幅な改善、様々な新しいエネルギー創出方法の確立、食料・衣料・住居が無料化、お金自体を不要とする社会、公平・公正・平等で安全な社会、老化を制御して不老の実現……むしろ、ディストピアだと思うがなあ。
唯一納得できたのは終章。何のしがらみもなく、新しい世界を創出するための要件を備えた唯一の国、それが日本だ。最後に太文字で「我々日本人こそが次世代スーパーコンピュータを開発し、新世界を創出しなくてはいけない」。そういうご本人が不名誉な事態に陥っている。もしかしたら国際的陰謀?
編集長 柴田忠男
image by: Shutterstock.com