蜜月時代の終焉か。トランプが安倍首相を名指しで批判した理由

 

日朝首脳会談模索の復讐?

そうはいっても、安倍総理が、トランプさんの嫌がることを全然しなかったかというと、そうではありません。つい最近の話です。トランプさんが、「金正恩に会う!」と宣言した。現職のアメリカ大統領が北朝鮮のリーダーに会ったことはありません。実現すれば「歴史的事件」になります。

ところが安倍総理、「日朝首脳会談を模索する」とかいいはじめた。私は、これをやると「日米関係が悪化する」と警告しました。「失敗を繰り返すのか。日朝首脳会談を模索する総理に伝えたいこと」でこう書いています。

こういう人物が、「安倍総理は、金正恩との会談を模索している」と聞けば、どう思うでしょうか?「シンゾーが俺の手柄を横取りしようとしている!」と考えるでしょう。
(RPE2018年3月15日号から)

そして、「日本はかつてアメリカを出し抜いて恨まれた過去がある」という例をあげました。

冷戦時代の初期、アメリカは、共産党の一党独裁国家・中華人民共和国を敵視していました。しかし、ソ連が強大化してきたので、中国と和解することにした。

 

1971年7月15日、ニクソンは、「中国から訪問要請があり、それを了承した」と発表。アメリカ政府は、日本政府に何の相談もせず、発表内容を知らされたのは、その15分前だった。日本政府は、大きな衝撃を受けました。

 

ニクソン訪中は、1972年2月。日本では、田中角栄が72年7月、総理大臣に就任した。彼は、同年9月訪中し、「アッ」という間に「日中国交正常化」を成し遂げてしまいます(ちなみに、米中国交正常化は、1979年)。アメリカを出し抜こうとする田中総理に、キッシンジャーは大激怒。「ジャップは最悪の裏切り者!」と絶叫したことが、明らかになっています。共同通信2006年5月26日から。

 


「ジャップは最悪の裏切り者」(解禁された米公文書より)

72年にキッシンジャー氏

 

【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう))」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった。

(同上)


 


なにはともあれ、田中総理は、アメリカを出し抜いた。それで、キッシンジャーは激怒していた。そのキッシンジャーは今、トランプの顧問をやっています。安倍さんが、トランプさんを出し抜いて金正恩に会うことを模索していることを知れば、「ジャップは、今も昔も裏切り者!!!!」と絶叫することでしょう。

(同上)


 

3月15日号で予想した通り、トランプ―安倍の仲は、険悪になった。私は、田中角栄の行動、安倍さんがやろうとしている行動について、「アメリカを『出し抜こう』としている(ととられる)」という表現を使いました。時事の記事をもう一度見てみましょう。

 


「安倍晋三首相と話をすると、ほほ笑んでいる。『こんなに長い間、米国を【 出し抜く 】ことができたとは信じられない』という笑みだ」。


トランプさんの発言が、「日朝首脳会談模索」に関係しているか、私にはわかりません。しかし、「日朝首脳会談」は、「トランプを出し抜き、功績を横取りしようとしている」と嫉妬されても仕方ありません。田中角栄さんの失敗から、総理は是非学んでいただきたいと思います。

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