アメリカは中国との対決姿勢を強めています。中国を標的に、鉄鋼やアルミ輸入に高関税をかけ、知財侵害についても制裁姿勢を見せています。また、アメリカは台湾との関係も強化し、政府高官の相互訪問を可能にする「台湾旅行法」が成立しました。
これらはすべて、アメリカの中国包囲網であることは間違いありません。さらに、米朝首脳会談が成立して両国が歩み寄ることがあれば、中国はメンツ丸つぶれです。台湾問題も北朝鮮問題も、すべてアメリカに主導権を握られることになるからです。
中国としては、これを放置することはできません。そのため、中国としてはこのところ関係がよくなかった北朝鮮との関係を修復せざるを得なかったということなのです。一方、北朝鮮からすれば、中国に自分を高く売りつける絶好のチャンスです。また、アメリカも対北強硬派を政権内部で重用している動きがあることから、北朝鮮としても、中国の後ろ盾がほしいところでもあります。
以上のような利害関係の一致から、中国と北朝鮮が歩み寄ったと見るべきでしょう。ただし、本当に歩み寄れるかどうかは微妙です。北朝鮮は金日成の時代から、政権内の中国閥を粛清してきました。金日成は延安派を粛清し、金正恩は中国派で叔父の張成沢を処刑しました。
また、金正恩は、中国に庇護されていた金正男を暗殺した疑いを持たれています。中国としては、言うことを聞かない金正恩を排したいと思っていることは間違いないでしょう。ただし、米中関係が緊迫するなか、中国としても金正恩を取り込んでおきたいと考えたわけです。
半島統一は朝鮮戦争以来の懸案であり、目下、北朝鮮がイニシアチブを握っているようにも見えます。北朝鮮の切り札は、中国、ロシアの両方を利用できるという点です。中国がもし頼りにならなければ、ロシアに乗り換えればいい。さらには、アメリカに擦り寄れば、中国は半島情勢から蚊帳の外に置かれることになります。今回の電撃訪中でも、そのような抜け目ない外交駆け引きが行われていることでしょう。
日本のメディアでは評判の悪いトランプ政権ですが、習近平もプーチンも独裁体制を強めている国際情勢において、日本にとって何が望ましいのかを見極める必要があります。
ロシアについては、イギリスに亡命した元ロシアスパイの殺害を企てたとして、20カ国以上の国で、ロシア外交官の追放が決定されました。これにより追放されるロシア外交官は100人以上にのぼると見られています。また、中国で習近平の独裁体制が進んでいることは周知の事実です。
このような状況下で、アメリカが自国第一主義に走るのは、ある意味で当然でしょうし、また、日本がいつまでもモリカケ問題で騒ぎ続けているというのも、異常なことです。