大村大次郎さんの解説
この記事にでてくるアメリカの大手通販企業というのは、明らかにアマゾンのことです。そして、G20のこの発議というのは、明らかにアマゾン対策といえるものなのです。G20では、さすがに今のままアマゾンに荒稼ぎされて、無税で乗り切られてはたまらないということで、各国が協調して対応に乗り出したということです。
ただアマゾンは、アメリカの企業であり、アメリカでいくばくかの税金を払っているので、アメリカ政府が後ろ盾にいるわけです。アメリカ政府が、G20の発議を素直に受け入れるかどうかは、疑問の残るところです。
ところで、アマゾンに関しては、トランプ大統領もたびたび非難しています。3月29日にも、トランプ大統領が、「アマゾンは税金を払っていない」として、アマゾンへの課税を強化すると発表しました。アマゾンは、一応、アメリカで税金を払っているのですが、収益のほとんどをタックスヘイブンに移すなどしているため、アメリカで支払っている税金はわずか200億円程度なのです。全世界での年間売り上げが10兆円を超えているにしては、あまりに納税額が少なすぎます。アメリカとしても、アマゾンにもっと税金を払ってほしいわけです。
ただ、アメリカは、世界中の国々がこぞってアマゾンから税金を取り立てることは、よしとしていないわけで、G20の試みには賛同しない可能性が高いのです。アマゾンは、こういうアメリカと他の先進国の微妙な関係をうまく衝いて、税金を安く済ませているともいえるわけです。
アマゾンのCEOのジェフ・べゾフは、1,120億ドル(日本円で約12兆円)を持つ世界一の資産家となっております。そして、ワシントン・ポストも買収しており、アメリカの世論への影響力も持っています。
アマゾンは、確かに非常に便利です。またビジネス的に優れている面も多々あると思われます。しかし運送業者や参加業者に強い圧力をかけたりするなど、決して手放しで「良心的な企業」ではありません。このままアマゾンが、税金も払わず膨張し続けることは、決して世界経済にとって好ましいこととは思えません。どうにかして、アメリカもG20諸国も歩調を合わせて、アマゾンをまっとうな状態にしてほしいものです。