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大村大次郎さんの解説

この課税漏れ事案というのは、簡単に言うと、期末の経費計上の間違いがあったということです。建設業者や住宅メーカーなどが経費計上をする際、まだ完成していない工事の経費を計上することはできません。完成して、売上に計上された工事だけが、経費も計上されるのです。未完成の工事というのは、まだ売上には上がっておらず、つまりは収入にもなっていません。なのに、経費だけを計上すると、売上と経費の関係に矛盾が生じてしまいます。

未完成工事かかった経費というのは、在庫と同じ扱いになるのです。仕入れしてはいるけれど、まだ売れていない商品(在庫)というのは、その店の資産です。これと同じように、未完成工事にかかった経費というのも、その事業者の資産ということになるのです。大和ハウスの場合、その未完成工事かかった経費を、資産として計上せずそのまま経費として売上から差し引いてしまったのです。そこを国税当局から指摘されたわけです。

この事案の何が興味深いか、というと、上場企業がこういう操作をすることはあまりないからなのです。

大和ハウスというのは、上場企業です。上場企業というのは、通常、株主を喜ばせるため株価を上げるために1円でも多くの利益を出そうとします。ですが、大和ハウスの場合は、その逆のことを行っているわけです。この課税漏れ事案を見る限りは、あえて利益を少なく計上しているのです。大和ハウスは最近非常に業績がよく、この利益を表に出すよりも、少しでも後に残そうという意識があったのかもしれません。これを見た限りでは、大和ハウスは、相当景気がいいということが言えるでしょう。

大和ハウスの株式の配当金を見ても、

  • 2014年3月期→50円
  • 2015年3月期→60円
  • 2016年3月期→80円
  • 2017年3月期→92円

と急上昇しています。そして、2018年3月期には98円の配当を予定しているようです。

これだけ利益が上がっているからこそ、少しでも利益を先送りにしようという発想が出てくるんでしょうね。そして無理やり利益を出さなくてもいいということは、安定株主がついているということでもあります。安定株主がいない企業は、株を売られないように、常に業績をよく見せておかなければなりません。大和ハウスはそれをしなくてよかったわけです。いろんな意味において、大和ハウスは、「儲かっている」ということが言えるでしょう。もちろん課税漏れは褒められたことではありませんが。

image by:  josefkubes / Shutterstock.com

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