「ひと手間プラス」で大ヒット。奇跡のサラダチキン誕生秘話

 

働き方にも「ひと手間」を~社員の幸福を目指す新戦略

社員の結束力で震災の危機を乗り越えたアマタケ。その経験は、社長の甘竹の考え方にも変化をもたらした。「震災で社員に苦労かけてしまいましたから、自分なりに恩返しをしたいという気持ちがすごくあるんです」と言う。

そんな甘竹の気持ちを形にしたのが、工場の3階にある休憩室。「昼休みには横になって休憩したい」という声にこたえて、去年、3000万円をかけてリニューアルした。

甘竹は震災を機に、商品だけでなく、社員の働き方にも「ひと手間」を加えようと新たなプロジェクトを立ち上げた。それが「ひと手間プロジェクト」だ。

その一つが各デスクに置かれた「いいねボックス」。同僚が「感謝の気持ち」をカードに書いて、この箱に入れる仕組みだ。

「複雑な発注システムをよく理解して頂き細かな対応をしてくれるので本当に助かります」というカードをもらった関東第2営業部の竜野奈代は、「最初は恥ずかしかったんですけど、やはり仕事のモチベーションも上がりますね。見られているんだと感じて」と言う。

さらに違う職場の社員が交流できるよう様々なイベントも開催。アマタケで働くことに、「楽しみ」や「やりがい」を感じてもらう会社づくりを進めている。

時にはこうしたイベントが新たなヒット商品を生むこともある。社内のバーベキューを機に商品になったのが合鴨の焼き肉用パックだ。

「普通は鴨って、焼肉で食べる発想無いと思うんですけど、焼いて食べたら改めておいしいと気づき、商品化しました」(関東第1営業部・粕谷憲司)

これを取引先のスーパーに提案してみると、初日から完売するほどの売れ行きに。新たな定番商品として扱われるようになった。

「実践の提案にも繋がるので、非常に良い取り組みだなと思いました」(粕谷)

 ~村上龍の編集後記~

先見の明とは、アマタケのためにある言葉かも知れない。

岩手の山里にありながら、創業者は養鶏をはじめてすぐに東京進出を目指し、先代は、抗生物質フリーのブロイラーを生みだし、秀企氏は赤鶏の原種鶏を導入した。

未来を感知する見識は企業を成功へと導くだけではなく信じられない苦難を克服する力となる。

大震災によってアマタケが直面した危機は想像を絶していた。創業以来続けられた無謀とも思える挑戦とその成果が、絶望的な状況を乗り越える原動力となった。

そしてその最たるものは、培われた従業員の結束」である。

<出演者略歴>

甘竹秀企(あまたけ・ひでき)1966年、岩手県生まれ。1989年、慶應義塾大学卒業。1991年、アマタケ入社。2004年、社長就任。2006年、企業スローガン「ひと手間カンパニー」を採用。

source:テレビ東京「カンブリア宮殿」

テレビ東京「カンブリア宮殿」

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