「ひと手間プラス」で大ヒット。奇跡のサラダチキン誕生秘話

 

売り上げ10倍を実現~危機を脱した感動秘話

そんな窮地に手を差し伸べてくれたのがモスバーガーだった。創業者がともに大船渡出身という縁もあり、アマタケに声をかけてくれたのだ。

「外食業界でも、アマタケさんはいい意味で違うと思っていました。『我々で何かできないか?これから考えます』ということで、商品開発をすることになったんです」(モスフードサービス・櫻田厚会長)

震災から半年後、モスバーガーは「南部どりを使ったハンバーガーを売り出してくれた。これがわずか1ヶ月で45万個を売るヒットとなった。

「すごく助けになりました。何よりも社員の意識。やはり商品が売れなくて沈みがちだった。それがお店に行けば『南部どり』という名前があるので、社員もすごくうれしいですから」(甘竹)

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これを足場に反転攻勢をかけたいアマタケは、消費者の声を聞こうとアンケートを実施。するとそこに意外なヒントが隠されていた。客の多くはサラダチキンの皮を取って食べていたのだ。甘竹はそれを聞き、「最初から皮を取ったほうが売れるんじゃないか」という考えが浮かんだ。

しかし、社内からは一斉に反対の声があがった。営業担当役員の鈴木和明は、「皮を剥ぐということは、もっと商品にパサつき感が出る。バイヤーさんや消費者の方にも、絶対に受け入れられないんじゃないかと」と、当時を振り返る。

それでも甘竹は皮なしにすると決断2014年に皮なしサラダチキンを発売した。すると思わぬ副産物も。皮を取ることで、40%もカロリーをカットすることができたのだ。これがヘルシーブームの波に乗り、震災前の1.5倍も売れる大ヒット商品となったのだ。

この経験を通して、甘竹はあることに気付く。それは「ひと手間をかけることが商品を強くする」ということだった。これを機に、アマタケは「ひと手間カンパニー」を会社のスローガンに掲げ、すべての商品の見直しに乗り出した。

たとえば手羽元。「もともと手羽元は両手で食べるのが普通ですが、弊社では片手で食べやすい手羽元にしている」(本社工場長・佐藤雄司)という。機械で途中まで肉を剥がすという「ひと手間」をかけ、食べやすい形に加工した。すると売り上げは2倍になった。

ひと手間をかけた新商品は「しゃぶしゃぶ用鶏ムネ肉」。厚さ5ミリにスライスしてある。家庭ではできないひと手間が新しい用途を生み、年間20トンを出荷するまでになった。

そして皮を取ったサラダチキンは、消費者が後から味付けしなくても済むよう、味のバリエーションを10種類に増やした。今や売り上げは震災前の10倍に伸びている。

数々の「ひと手間」の取り組みで、震災で落ち込んだ業績は、V字回復。奇跡の復活を遂げたのだ。

「震災があってよかったとは思っていませんが、震災があったからこそ、大きな成果は生まれたと思っている」(甘竹)

震災から立ち直った原動力。それは、祖父の代から受け継がれてきたチャレンジ精神にあるのかもしれない。

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