財務省は被害者?
【読売】も1面トップに2面記事、3面の解説記事「スキャナー」と社説、8面に国有財産についてのQ&A、9面は財務省について、13面に「交渉記録の要旨」、35面社会面も。見出しから。
1面
- 森友文書 国会中に改ざん・廃棄
- 財務省 佐川氏答弁後に
- 28日集中審議 衆参予算委
2面
- 誰が「廃棄」指示 焦点
- 財務省、月内にも調査発表
- 昭恵氏付き、財務省に「照会」
- 野党、夫人らの喚問要求
3面
- 値引き要求 執拗に
- 森友土地交渉 生々しく
- 籠池被告妻 コースター投げ「嘘つき」
- 加計・森友問題 国会の混乱に幕を引く時だ(社説)
9面
- 最強官庁 膨らむ不振
- 森友交渉記録
- 財政運営 発言力低下も
35面
- また隠蔽 憤り
- 財務省「これが全て」強調
uttiiの眼
《読売》も多くの紙面を費やしてこの問題を報じているが、中心的に伝えられているのは、価格交渉における籠池夫妻の乱暴さだ。
見出しで言えば、3面の解説記事「スキャナー」に「値引き要求 執拗に」「籠池被告妻 コースター投げ「嘘つき」」とあるのを見れば分かる。「多くの政治家や関係者の名前が記載される異例の交渉に、財務省や近畿財務局は翻弄されていた」と、財務省側に同情的なスタンスを表明している(リード末尾)。「関係者」とあるなかには圧倒的な重みを持って「安倍昭恵」の名が入っているはずだが、ここにはなぜか記されていない。
籠池夫妻が決して「上品な交渉者」でも「控えめな人格者」でもないことは重々承知している。記録の中には、妻の諄子被告が近畿財務局の統括官にコースターを投げ付け、「嘘つき、お前なんか信用できない、帰れ、等の暴言を吐く」という記載もあり、《読売》はこうした点を捉え、財務省が一種の“被害者”であったかのように描こうとしているようだ。
だが、籠池夫妻に強圧的な主張をされたから、不当な安値で売却することになったのだろうか。
強い言葉で攻撃してくる相手に対しては、役人らしく、自分の立場と法の規定内容を伝え、できないことはできないと断ればよい。野党のヒアリングの時などは、どんなに厳しい言葉で攻め立てられても、妥協などしないではないか。もしも相手が乱暴を振るうようなら、警備員を呼ぶなり、警察を呼ぶなりすればよい。一度暴力的な行為があったなら、そのことを根拠に以降は面会を拒否すればよい。
《読売》が展開している「8億円値引きの理由」として納得ができそうなのは、財務局が「地中に大量のガラスがあったことを認識していたにもかかわらず、籠池被告側にきちんと説明していなかった弱み」くらいか。
財務省の誇り高き役人たちが、籠池夫妻に詰られ、ものを投げ付けられても「交渉」を続けざるを得ず、結果として8億円の値引きまでさせられることになったのは、安倍昭恵氏の存在があったからであり、その背後に、安倍総理の存在があったからではないのか。《読売》も籠池夫妻が、特に売買の話になってから「首相夫人や政治家などの名前を頻繁に持ちだして圧力をかけていた」と記していて、財務局は度々困惑させられていたとしている。しかし、2面記事では、昭恵氏付きの谷査恵子氏による照会の件について触れながら、「交渉記録からは、安倍昭恵首相夫人の存在などが取引に影響を及ぼした可能性を、明確に読み取れる内容はなかった」と断言している。
籠池夫妻が財務局を手玉にとっていく構図は、「虎の威を借る狐」そのものだと思われる。結果として国の財産が不当に安く売られてしまったことを問題にするにあたり、《読売》は「狐」ばかり追い回し、「虎」は免罪したいらしい。それでは話にならないだろう。