安倍総理も承知の案件だと思わせて愛媛県や今治市を本気にさせる。そのために架空の話をしたということをFAX文書は語っている。
しかし、これは過去の経緯からみて実に不自然である。元愛媛県知事、加戸守行氏が2017年7月10日の国会閉会中審査で証言したように、「愛媛県にとっては12年間加計ありきだった」のだ。
2015年からのことではない。長年にわたり、愛媛県と今治市は加計学園とともに構造改革特区での獣医学部新設を申請し続けたが、却下されてきた。愛媛県、今治市を騙す必要などないのだ。
森友疑惑における財務省と同じく、安倍首相の関与がないような外形をつくるため、学園と官邸の焦りから生まれた突飛な行動と言えるだろう。ウソを県、市に伝えたのだというウソである。
中村時広愛媛県知事が「県にウソの報告をしていたというのなら、すぐに県や今治市に謝罪し、記者会見すべきだ」と憤るのも、もっともだ。
そもそも、これまで問題にされていたことに関し、加計学園がマスコミに何かを発信したことがあっただろうか。メディアが説明を求めても回答がない。安倍首相の力を頼む後ろめたさがあるために、メディアに対してはつねに逃げ腰である。
ペラのFAX1枚で、情報を修正しようというのは、あまりにも社会を甘く見過ぎている。これが教育機関だというのだから、あきれてしまう。
安倍首相は例によって、「加計理事長とは会っていない」と否定した。首相動静にも書かれていないし、官邸への入館記録を調べても載っていないという。加計学園の突然の発信は、その首相答弁に合わせるものだ。
官邸への入館記録はすぐに破棄されるのではなかったのか。愛媛県や今治市の担当者が2015年4月2日に官邸で柳瀬氏と会ったのを否定するために、破棄することになっているかのごとく言い張っていたはずだ。
日大アメフト部の違反タックルをめぐり、学校法人の経営姿勢があらためて問題になっているおりである。日大では大学名を利用した営利事業を展開し、一部の理事たちが正規の報酬のほかに、ファミリー企業の取締役として毎月多額の分け前にあずかっている。
学校の経営が利権の巣窟になってるのは加計学園も同じではないか。経営者の品格、資質が問われている。
加計理事長は、野党から証人喚問を求められている疑惑の中心人物であるにもかかわらず、メディアに口をつぐみ、記者からこそこそ逃げ回る生活をいまだにしている。情けないことだ。
その一方で、獣医学部への受験者が多かったことだけをもって、国家戦略特区の目的を達したかのような自画自賛をする。
それほど自信があるのなら、マスコミの前に出て、疑惑への質問を受けることを甘受したうえで、これから国際的な存在価値のある獣医学部にどういう手順で発展させていくのかを語ったらどうか。
経営者とはいえ、大学のトップである以上、教育者でもあるはずだ。どうして堂々たる人生を歩まないのか。
日大の理事長は「俺は相撲部だ」「アメフトなど知らん」と、大学トップの自覚などまったくない様子で、報道陣の取材はもちろん記者会見にも応じない。おまけに週刊誌には裏社会とのつながりを指摘されるありさまだ。
繰り返しになるが、なにがしかの権力を握っている人間は、特権ゆえの不都合な真実を抱えがちであり、その呪縛によって隠したり逃げたりしなければならなくなるのだ。
昨今はとくに、一強といわれる総理大臣があからさまにウソをつき、知らぬ存ぜぬをやっている。「右へ倣へ」が増殖し、始末に負えない。
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