織田元空将はこう説明します。
スクランブルをかけても、自衛隊機は、内閣総理大臣から防衛出動が発せられて初めて軍隊として行動できる。それまでは警察と同じ。だから、正当防衛と緊急避難以外では武力行使できない。ということは、国際法で定められた警告射撃ができないし、もし弾が外国機に当たって撃墜してしまったら、パイロット個人が罪を問われることになる。
領空侵犯機に対しては、領空外に追い出すか、強制着陸させるかのいずれを実行しなければ、その空域を実行支配したことにならない。実効支配していなければ、領空を主張できなくなってしまう。
では、自衛隊機はいったいどうやって任務を遂行するのか? 現行憲法と自衛隊法下では、自衛隊員は任務を遂行できないばかりか、命を危険に晒すことになってしまう。
その日本の実態を知っている中国機はなぜ突っ込んでこないのか? それは、日本は特攻隊の国だから、いざとなったら法律を無視して応戦してくるだろう、と考えるから。
なんと、日本の空は、70年以上前に特攻隊で散った英霊に守られているというわけです。こんな状況をいつまでも放置する日本って、いったいどんな国なのでしょうか?
こんなひどい矛盾、欧米人なら絶対に耐えられないし、耐えようとも思いません。さっさと憲法も法律も改正するでしょう。
ところが、名も無き自衛官たちは、この矛盾を飲み込んで、文句も言わずに毎日祖国を守るために飛び立っているのです。日本という国が抱えた根本的な矛盾を、自分たちの命を犠牲にして補っているのです。
この驚異的な忍耐力と自己犠牲の精神、日本人にしかできません。
織田元空将曰く、自衛官はそれを口に出すこともせず、カウンターの隅でウィスキーのグラスを傾けながら、祖国を守ることの誇りをひとり静かに噛み締めているのだと。
自衛官の社会的地位は低く、ずっと社会の日陰者扱いで、時にはあからさまに悪人扱いされてきました。
防衛大に合格した織田元空将は、日教組の先生たちに呼び出され、囲まれて言葉のリンチを受けました。
「なぜ防衛大なんぞに行くんだ。お前をそんな人間に育てたつもりはない!」
被災地でカレーを作って住民に振舞うと、「憲法違反の自衛隊が作ったカレーを食べるべきではない」と書いた横断幕を持って抗議してきた人が居たそうです。
こんな状況でも、自衛隊という組織が破綻せずに機能し続けて来たことは驚くべきことです。