初のワールドカップ8強の座を賭け、格上のベルギー相手に予想を上回る大健闘を見せてくれたサッカー日本代表。アジア唯一の決勝トーナメント進出国としても注目を浴びましたが、韓国ではどのように受け止められていたのでしょうか。 無料メルマガ『キムチパワー』の韓国在住歴30年の日本人著者が、現地のテレビやネット上の反応といった「事実」を冷静に伝えています。
W杯をいかに見ているのか
きょうは、ワールドカップに関する内容で書いてみる。サッカーは全世界の人が愛する共通のスポーツだ。野球はごく限られた国でだけ愛されているが、サッカーはグローバルだ。筆者も小、中、高(2年くらいまで)とサッカーをやってきたので、サッカーに対する愛は人並み以上と認識している。(野球への関心は0に等しい)。
今回のロシア大会。アジア勢は日本だけを残して全て散ってしまった。16強に這い上がったのは日本のみ。だったらアジアの人は皆日本を応援するのだろうか。
否だ。
台湾、ベトナム、タイなどはたぶん大部分、日本を応援してくれるのだろう。中国はどうか。30%くらいはあるのか。(いや、5%未満か)。韓国はどうか。日本を応援する韓国人はたぶんただの一人もいないだろう。
昔は、いくら日本が嫌いでも、同じアジアとして応援してくれてもいいんじゃないのと思っていた時期もあった。しかし今はちがう。そんなことは期待するべきでもないし、期待しても100%叶えられないワザなのだ。こちらで30年暮らしてきてやっとそんなことがわかるようになってきた。
こちらでワールドカップの放送を見ていると、実に耐え難いものがある。KBSだろうとMBCだろうとSBSだろうと、どこの放送局も、皆、アンチ日本の心情がもろに伝わってくる言い方で放送をする。日本が出てくると、対韓国でなくても常に日本でないほうを応援する立場での解説となる。
問題は、これって、わざとしてるんじゃなくて、自然にそうなってしまう、という点だ。だれかが、どっかのチームを応援するというのは、ごく自然な心の反映だ。無理につくろってだれかを応援するものではない。自然の発露としてエールが出てくるものだし、無理やり頭で操縦することはできない。
それを象徴するような記事が韓国の中央日報にでていた。
2-2の後半ロスタイムにシャドリが劇的な逆転ゴールを決めたことでベルギーが3-2で勝利した。このとき、KBS(韓国放送公社)のハン・ジュンヒ解説委員が「シャドリ、ありがとうございます」と興奮気味にコメント。
韓国の一部の視聴者から
「公営放送のKBSでこのような不公正な解説をしてもいいのか。いくら日本が勝つのが気に入らなくても、解説は公平にすべきではないのか」
「韓日戦でもないのにこのような不公正中継をするなんて。解説者ならもっと中立性を守って中継するべきだ」
といった批判のコメントも寄せられているようだ。そんなことを言ってくれる視聴者のかたにはほんと、感謝したいけれど、この解説者は、例外的に彼だけがそんな発言をしたのではないというところが重要だ。KBSが話題になっているわけだが、それはMBCだろうとSBSだろうと皆同じなのだ。心の底に「日本が負ければいい」という気持ちが知らず知らず潜んでいるからだ。
それにはいろいろな原因が考えられる。一つ。歴史的な観点から常に日本に対して反発心があるから。一つ。韓国が16強に行けなかったのに日本だけ行ってまた勝ったら韓国がさらに下になってしまう。日本の下になるのは死ぬよりもいやだから。いろいろあるなかで、この二つの観点が重要なところだろう。
「だんご3兄弟」という歌があった。その歌詞の中に「自分が一番、次男」という部分がある。次男は常に長男を追い越そうとする本能的な闘争心があるようだ。
日本と韓国はちょうどこの歌詞のように、「自分が一番、韓国」という感じなのである。歴史的には中国(長男)、韓国(次男)、日本(三男)の順序だと思うけれど、いったんサッカーとなれば、「自分が一番、韓国」なのである。
上の韓国の解説者の言で泣かせるのが、「本能を隠せなかった。敗れたチームには申し訳ない」と語っている点だ。彼らがアンチ日本になるのは、本能なのである。きれいな女性を見て気分の悪くなる男はいないはずだ。本能だから。そのレベルで「本能的に」サッカーでは日本に負けてほしいのである。
解説者がどんなことを言おうと、それにいちいち腹を立てる自分は今はいない。言わせておけというのが今の筆者の心情である。サッカーでは「本能的に」アンチになっても、仕事や付き合いとなるとまた別だ。筆者も大好きな韓国人がたくさんいるし、韓国の人もつきあいのレベルになるとアンチ日本ではない。シンパ日本が大部分だ。全てをなげうって筆者のためにしてくれる韓国の人もあまたいる。
だから告白すると、ワールドカップの放送(日本の関係するゲーム)は、ミュートにして見ている。ゲームだけ見ていればそれが一番だし、こいつ何をほざいているんだ、などとストレスを受けずに済むからだ。
なにはともあれ、ロシアW杯(日本)は終わった。8強まで行ってほしかったけれど、あれだけやれれば「すごい! よくがんばった。日の丸戦士よ」と言ってあげたい。次のW杯では久保タケフサなども出てくる。また楽しみが待っていてくれるじゃないか。4年後に期待しようではないか。
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