芸能人のプライベートの写真や卒業アルバムの写真が、ネット上で出回るケースは少なくありません。
一般人と比べてプライベートの情報が流出しやすい芸能人ですが、プライバシー権は保護されないのでしょうか?
プライバシー権の定義
芸能人のプライバシー権が保護されるかどうかを確認する上で、プライバシー権の定義を把握する必要があります。
プライバシー権とは『憲法13条』を根拠とする基本的人権です。
三島由紀夫の著作『宴のあと』事件の裁判で、プライバシー権の権利性について積極的に検討され、これを私生活上の情報をみだりに公開されない権利と構成した上で、以下のような情報がプライバシー情報となると判示しました。
- 私生活上の事柄または私生活上の事実と受け取られるおそれのある事柄であること
- 一般人の感覚では公開を欲しないであろうと考えられる事柄であること
- 一般の人々に公開されておらず公開されることで本人が不快・不安の念を覚えること
裁判年月日:昭和年月日 裁判所名:東京地裁 事件番号:昭36(ワ)1882号 事件名:損害賠償請求事件 〔「宴のあと」事件〕 裁判結果:一部認容、一部棄却 文献番号:1964WLJPCA09280002 |
芸能人のプライバシー権は『表現の自由』『知る権利』と対立することがある
たとえ芸能人であっても、上記のような事柄に属する情報はプライバシー情報に該当するといえます。そのため、正当な理由なくこれを暴露する行為は、プライバシー権の侵害となり得ます。
他方、芸能人や政治家のように、社会からの関心を集める特殊な立場にある個人については、情報発信者の当該個人に対する『表現の自由』や情報の受け取り手である一般人の『知る権利』を無視することができません。これらの権利も憲法上保障された基本的人権であるからです。
そうすると、一般人の場合はプライバシー権侵害として違法となる暴露行為も、芸能人や政治家については対立する表現の自由・知る権利がプライバシー権に優先する場合には違法とならないということもあります。
有名人に対してもプライバシー侵害は成立する
だからといって、有名人の情報をやみくもに発信してよいわけではありません。
決して有名人にはプライバシー権がないわけではないのです。有名人であっても、表現の自由や知る権利よりもプライバシー権を優先させるべきという場合は十分あり得ます。
そして、プライバシー権を優先すべき場合には、たとえ有名人に対する発信行為でも、プライバシー権を侵害する行為として違法となります。
実際、元サッカー選手の中田英寿が、自身の生い立ちを掲載した出版社と著者に対して、プライバシーの侵害を理由に裁判を起こしたところ、訴え(発行の差し止め、損害賠償請求)が認められた事例もあります。
まとめ
芸能人のプライバシー侵害について、拡散力もあり実被害が多いためマスコミが被告となる裁判が多くみられます。
個人がSNSや掲示板での芸能人に関して何気なく行った情報発信も、プライバシーの侵害が成立する可能性は十分にあり得るのです。
安易に発信した情報でも、ネット上で拡散するリスクがあります。
思いもよらぬトラブルに巻き込まれる可能性があるので、第三者のプライバシーを侵害しないためにも、発信する情報には十分気をつけましょう。
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