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現役医師が警告。地球温暖化で日本にもデング熱が本格上陸の兆し

連日連夜の猛暑にくわえて、台風や大雨による被害も相次いだ今夏の日本列島。現役医師の徳田安春先生は、このように高温や水害が発生した後は、世界各国で猛威を振るうデング熱をはじめとした様々な感染症が、とても広がりやすくなると指摘。それらの大元の原因となっている地球温暖化をどう防ぐべきかを、自らのメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』にて紹介しています。

豪雨や台風の根本原因

近年の日本では、局地的な豪雨が原因で洪水土砂崩れが発生し、大きな被害が出るケースが頻繁に見られるようになっています。くわえて熱波による異常高温熱中症患者が多発し、死亡者も続出しました。この夏、日本を襲った台風の数は例年以上に多くなり、それによる暴風大雨で多くの人々が被害を受けました。夏休みに予定されていた様々なイベントも、多くが中止に追い込まれました。

新聞やテレビ、ネットの気象解説では、気圧配置がどうのこうのというだけでなく、海面の温度や気温の急激な上昇が原因としており、地球温暖化が根本原因であることを認めています。問題は、根本原因としての地球温暖化を認めた後の行動です。地球温暖化を認めてはいるものの、この根本原因に対する行動への呼びかけに関してはほとんど聞かれません。

2018年の夏は、北半球の各地で熱波による異常高温を記録しました。ポルトガル、スペイン、イタリア、トルコなどの国でも、日本と同じように40度以上の気温を記録しました。一方で中東などの内陸の国々では、異常な乾燥状態となり、農作物への被害から食糧難も出てきています。地球温暖化による被害は地球規模で見られるのです。

地球温暖化で増える感染症

豪雨や洪水、暴風の後は感染症が広がりやすくなります。下痢や嘔吐をきたす胃腸炎や、せきやたんをきたす肺炎気管支炎が流行します。また、池やプールなどの淡水がネズミの尿に汚染されることで、レプトスピラ症と呼ばれる感染症も広がります 。この病気は、髄膜炎肝障害腎不全などをきたし、適切に治療をされないと患者は死亡することもあります。

また世界的にみると、すでにデング熱が広がりつつあります。私は先日ミャンマーの病院に視察に行きましたが、ヤンゴン市内にある小児病院の入院患児で最も多い原因がデング熱でした。デング熱の患者で入院となるのは、ほとんどデング出血熱と呼ばれる重症型ですので、実際のデング熱患者総数はもっと多いはずです。

最近の研究によって、中南米でのデング熱患者も地球温暖化によって、今後爆発的に増えることがわかりました。 このままでは2050年までに年間750万人もデング熱患者が増えます。中米のパラグアイや南米・アルゼンチンの北部地域には、現在デング熱はあまり見られませんが、地球温暖化によってこの地域にもデング熱が大きく広がると考えられています。そして中南米で起きていることは、日本でも起きる可能性があるのです。

今できる温暖化対策とは

産業革命以降、人類は石油や石炭などの化石燃料を燃やし続けてきました。これが温暖化の最大要因です。ゆえに、まずはエネルギー政策の抜本的変革が必要です。具体的には、太陽光や風力発電などへの大々的な切り替えです。これは産業界のみではできることではなく、政治的に誘導して行う必要があります。コストをかけてでも行う決意と行動力のある政治家を応援して、政策実現させるのです。

また、日本はこれまで大量の自動車を生産してきましたが、そのほとんどがガソリン車でした。これを原則全て電気自動車の生産に切り替えるのです。自動車メーカーは反対するでしょうが、自動車から排泄される二酸化炭素ガスも無視できません。消費者も電気自動車を買うという賢い選択をすることが望まれます。ドイツや中国は、将来的に電気自動車生産にシフトすることを発表しています。自動車を世界に販売している日本は、ここで追いつけ追い越せの精神で頑張ってほしいところですね。

中南米のデング熱発生予測についても、国々が抜本的な対策を実施、具体的には産業革命以前の平均気温からの上昇を2度までに抑え込むことにより、デング熱の年間発症ケースを100万人も減らすことができると試算されています。私たちの決意と行動が、将来の人々の健康を守ることになるのです。

文献

Limiting global-mean temperature increase to 1.5-2 °C could reduce the incidence and spatial spread of dengue fever in Latin America.

image by: Shutterstock.com

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