中国・韓国にも遅れを取る。基礎研究軽視の日本が行き着く末路

 

ノーベル賞受賞の常連になったが…

1901年から2018年までの日本人のノーベル賞受賞者は物理学賞9人、化学賞7人、生理学・医学賞5人、文学賞2人、平和賞1人の計27人で非欧米諸国の中で最も多い

2018年のノーベル生理学・医学賞には京大特別教授の本庶佑氏が選ばれた。本庶氏は受賞の会見で「日本は基礎研究に対し、もっと長期的展望に立って科学研究に支援すべきだ」と訴え、最近の日本の基礎研究の弱体化に警鐘を鳴らした。事実、日本の基礎研究の危機は、様々な事例で指摘されている。

  • 世界の研究者に引用される影響力の高い論文の世界シェアは10年前の4位から9位にまで落ちた(2017年)
  • 国際会議で講演に招待される日本人研究者が少なくなった
  • 科学技術予算は2018年に3兆8,400億円だが2000年以降横バイが続いている。中国は16年に22兆4,000億円と2000年に比べ約7倍となってい る。アメリカは予算額2位で2000年比1.2倍の14兆9,000億円(17年)
  • 若い学生は博士課程に進まず、2003年をピークに博士課程への進学が減り続けている。政府は博士号を取得して次のポストを目指す「ポスト・ドクター1万人支援計画」を打ち出したが、大学も企業も雇用に消極的で高学歴となっても収入の少ない実情が続いている
  • 短期的な成果を求める風潮が強く、長期的な視野でじっくり研究に取り組む傾向がどんどん薄れている

──等々、かつての「科学技術大国を目指すという志や情熱が薄れ支援も少ないのが実情なのだ。

アメリカでは若い人たちの間からマイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブックなど次々と新しい企業が輩出され、社会を引っ張っているが、最近の日本にはそうした元気のある企業も生まれていない。明らかに日本の研究土壌は衰え、人材も伸び悩んでいるといえる。どこかで、しかも早急に手を打たないと中国や韓国に遅れをとる後進国になり下がってしまおう。

(Japan In-depth 2018年10月22日)

image by: Shutterstock.com

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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