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MBAがネットライフ調査から読み解く「リーバイス視点」の必要性

『日経MJ』10月17日号に掲載されたネットライフ1万人調査の結果を、マーケティングのプロとしての視点で読み解くのが、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人のMBAホルダー、理央 周(りおう・めぐる)さんです。激変するネットライフの中で、ビジネスに向き合う私たちが何をし、何に備え、何を準備すべきなのか。理央さんがそのヒントを示してくれています。

激変したメディアとしてのインターネット

今号では、今のネットライフの動向から、我々が何をすべきかを考えていくが、その前にまず、ここ最近のネットの変遷をレビューしてみる。 2007年にiPhoneが世に出て、Webが双方でコミュニケーションできるようになり、Web2.0のフェイズに移行した。 それまで、生活者としては見るだけのメディアだったインターネットが、消費者が自分で発信できるようになった。ブログや、YouTubeなど、いわゆる消費者生成メディア(=CGM Consumer Generated Media)の誕生だ。

さらに、このようなメディアに、コメントできるようになり、また人の投稿を共有・シェアすることや、いいね、という意思を表すこともできるようになったのが、2009年ごろから。そしてその発展によっての、ソーシャルメディアの登場となる。

この頃にTwitter、Facebookといった、仲間、フレンド、フォロワー達に、情報を発信し、反応を確かめ、さらに拡散していく、というSNSのスタイルが確立された。

このようなインターネットの浸透と発展は、常に、インフラとハードウエアの進化とともに進んできた。インフラの中でも、特に通信環境の整備が、インターネットの普及と進化に寄与している。

ほんの15年くらい前までは、常時接続ではなく、電話回線も使われていたが、今よりも、回線速度が遅く、動画はおろか、静止画像を見ることにも、難儀したものだった。

また、無線環境も充実し、回線速度も劇的に上がった。4Gの登場で、どこででもインターネット接続で、動画などのリッチなコンテンツを見られるようになったし、5Gが普及すればさらに、ということになりそうだ。

ハードウエアに関しても、パソコンのスリム化や、iPhoneやiPadのような携帯デバイスの発展で、情報の授受や発信が容易になったことも、メディアとしてのインターネットを激変させた。

このハードとソフト、コンテンツの進化が、めまぐるしい今、私たちが何をすればいいのか、何に備え、何を準備すべきかを考えていく。

今時のネットライフ~スマホ決済

『日経MJ』の10月17日号に、ネットライフ1万人調査が載っていた。カテゴリは4つで、スマホ決済、動画、SNS、CtoCなどだった。

まずはスマホ決済。スマホで通販をする割合が非常に増えて、消費額ではなんと4割。PCが減っていることを考えると、かなりの割合になっているといえる。

よく使われる主なスマホ決済のプラットフォームとしては、楽天Edy、 Id、スイカ、ラインペイが挙げられている。全体では45%が楽天Edyを使っているとのこと。年代別で顕著な差が出ているのが興味深い。

さらに、年代別で分解していくと、楽天Edyは30~40代以上の間で人気。一方で、10代後半の同じアンケート見ると、LINEペイが圧倒的人気で、42.9%が使っているとのこと。次にスイカ、そして楽天Edyは12.9%と3位になってしまう。

面白いのは、20代のアンケート結果だ。楽天Edy、Id、Suicaが30%前後で拮抗している。LINEペイは23.8%で4位だが、この4つがほぼ同じような割合で使われているのが面白い。

次にすぐ決済で支払われている場所と、そのランキングが載っている。

やはり1番多いのはコンビニで、70%の人がコンビニでスマホ決済を利用したと答えている。そして、スーパー、ファーストフード店、ドラッグストアと続いていく。レストランや家電量販店そして美容院など、1個(1回)単位あたりの商品単価が、ある程度高い場所に関して、まだ使われていないことがここからは読み取れる。

興味深いのは、利用者の需要拡大を受けて、小売業もスマホ決済への動きを本格化させている点だ。 ローソンは4月に、スマホ決済サービスを開始。ローソンそのものが、コンビニATMを開業したこともあり、金融と小売の垣根が、どんどん減っていく傾向にありそうだ。アマゾンバンクもこういった大きな流れの中で、銀行事業をスタートさせる可能性も、容易に予想される。

スマホ決済とは、とりもなおさずキャッシュレスになっていく、というトレンドの真っ只中にあることになる。これは、政府も本腰を入れて、来年の消費税増税時に、キャッシュレスでの決済であれば税金を優遇、というような措置も取られることになるであろう。

今時のネットライフ~動画ライブ配信

次に、面白いのは、ネットライブでも特に動画、ライブ動画の楽しみ方の変化だ。カテゴリーとして、1番人気があるのは、ニュースやスポーツを抑えて、「エンタメ」とのこと。特に、YouTuberがアップするライブ動画だとのことだ。

しかも、男性は7割超が、このYouTuberのライブ動画を見たことがある、というデータも出ているそうだ。ここ最近は、ブイチューバーと呼ばれる、バーチャルのボーカロイドのような、3次元の架空キャラが運営するチャンネルが非常に人気があるということだ。

動画サービスについては、AbemaTVも出てきたし、ニコニコ動画も健在なので、また新しい展開が起こりそうだ。

今時のネットライフ~AIスピーカーの今後

AIスピーカーの調査も興味深い。約1年前から日本市場で販売されているが、「持っている」との回答が5.6%しかないとのことだ。そのうち7割が男性ということである。内訳は、Googleが4割、アマゾンが4割と拮抗している。

やはり、AIスピーカーが日常生活に欠かせない、というところまで来ていないのが、爆発的な普及に至っていない要因だろう。これからは、コンテンツの充実が最大の必要ごとになるだろう。

ユーザーが欲しいのは、AIスピーカーそのものではなく、AIスピーカーがある、便利な生活なのだ。その意味において、ユーザーがAIスピーカーでできること、得られることを実現できるコンテンツ、ソフトウエアが必要だ。

今時のネットライフ~ユーザーの利用サービス

ユーザーの利用サービスに関しては、即日配送を評価しているというのが、面白いデータだった。 リアル店舗にとって、最も大きな独自性である、「すぐに買える」「その場で入手できる」という点が、ネットでもできてしまうということになる。これはリアル店舗にとって大きな脅威になる。

今時のネットライフ~SNSアプリ別の人気

次に、SNSプラットフォーム別のデータが出ていた。今最も利用されているアプリはLINE、その次にTwitterと続き、そしてInstagramがFacebookを初めて抜いたというデータが出ていた。

SNSの市場においては、移り変わりが早いことはよくわかることだが、Facebookは記事にもある通り大人の社交場、という印象が強くなってしまい、若い世代のFacebook離れが進んでいることは顕著のようだ。

Instagramが増えたというその若い世代で見ても、LINEが利用されていることは、データから見ても明らかだ。

LINEと、Twitter、Instagram、Facebookとの違いは、LINEがメインのメッセージ機能だけではなく、決済アプリやニュースなども同時に提供している、いわばLINE経済圏といったものを構築している点だ。

これは、韓国におけるカカオトークや、中国のWeChatも同じことで、ワンストップで全てできる、という利便性が高いことが人気の背景にある。

ただし写真中心のInstagramにおいては、ユーザーの投稿を見て、そのままECサイトに行き購入する、という流れができていたりする。

SNSをメディアとして、マーケティング活動で活用する場合は、複数のメディアを効率よく同時に使う、統合型マーケティングの考え方はやはり必要であろう。

ネットライフの変化への対応が成否の分かれ目

マーケティング的な視点では、こういったような大きな世の中や市場が変化するときには、その周辺需要をどのように取り込むかというのが、大きな成否の分かれ目になる。

例えば、スマホ決済への対応として、ローソンやセブン&アイのような大企業の既存事業であれば、インフラを投資することもできるが、同じ大企業においても、新規事業の場合だったり、ましてスタートアップ企業や中小企業においては、多額の設備投資を一度に、ということは容易ではない。 ではどうすればいいのだろうか?

ゴールドラッシュの時に、金を掘りに行く人たちをみて、耐久性の高い素材のパンツが必要だ、と潜在需要を見つけ出し、その周辺事業としての、ジーンズを販売した、リーバイスのような視点が必要になる。

システムを開発する事業者であれば、インフラを提供し、小規模事業主が集まれば、共通して使えるような、決済システムを導入していくという具合だ。

image by: Hafiez Razali / Shutterstock.com

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