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ドラゴン桜の指南役が受け持つクラスの子供にあやとりをさせる訳

江戸時代に井原西鶴が綴った『諸艶大鑑』に「絲どり」として登場するあやとりは、日本だけではなく世界各地で古くより伝わる遊びで、宗教儀式に用いる地域もあるようです。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では著者で漫画『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等さんが、意外と知られていない「あやとりの効能」を紹介しています。

あやとりで一人の女の子が元気になった話

私の講演会を開いてくださったあるPTAの、スタッフの山田(仮名)さんに聞いた話です山田さんには小学校3年の加代(仮名)さんという娘さんがいます。加代さんは2年生のときには、同じクラスに仲のよい友達が数人いました。でも、新しい3年生のクラスでは、5月になっても友達ができず休み時間にも遊びの輪の中に入れないことがよくありました。

ある日、山田さんと加代さんは書店に行きました。すると、加代さんがあやとりの本を見つけてほしがったので山田さんは買ってあげました。本にはあやとりの紐もついていたので、帰宅してさっそく二人で「ああだ、こうだ」と言いいながらやり始めました。紐は1本だったので、山田さんは太めの毛糸を使いました。

加代さんはそれまであやとりをやったことがなかったので、「パンパンほうき」や「ゴム」などの簡単な技からはじめました。ところが、1週間もするとたくさんの技を覚えてかなり難しい技もできるようになりました

そんなある日、加代さんは学校の昼休みに一人であやとりをしていました。すると、それを見たクラスメートのある女の子がすごいね私にも教えてと言ってきました。加代さんは、毛糸を何本か持っていたので貸してあげて、やり方も教えてあげました。それを見たほかの子たちもやってきて、たちまちあやとりが人気の遊びになりました。

でも、毛糸が足りなくなってしまいました。すると、先生が事務室に行って、毛糸よりもうまくあやとりができる紐をたくさんもってきてくれました。

次の日、加代さんは家からあやとりの本を持ってきて、クラスメートにも見せてあげました。その次の日、先生が市の図書館であやとりの本をたくさん借りてきてくれました。

折しもこの年はいつもの年よりも梅雨入りが早かったので、子どもたちは外で遊べなくなりました。それもあって、休み時間にはあやとりが大ブームになり、その中心には加代さんがいました。これがきっかけになって、加代さんは3年生のクラスでも楽しく過ごせるようになりました。めでたし、めでたし!

あやとりには抜群の教育的効果がある

私の受け持つクラスでは、必ず、毎年あやとりに取り組みます。1年生でも6年生でも、必ずやります。最初は何もできない子が、やっているうちにどんどん覚えていきます。なぜ必ずやるかといえば、あやとりには、驚くほど多様な教育的効果があるからです。

1.様々な技ができるようになることで、達成感を味わうことができます

そこに向上の喜びがあり、またそれが自信につながり、自己有能感を養うことができるのです。技ができるようになったときの喜びは、鉄棒や縄跳びでのそれと同じです。3年前、3年生で教えた子の母親が、あのころ夢中になったけん玉やあやとりが6年生の今も子供の財産になっていると言ってくれました。

2.技の習得に向けて努力することで努力の大切さを知ると同時に、集中力を養うことができます

こつこつと取り組む子、夢中になって一日中練習する子などが出てきます。そのような努力の経験は、必ず他のことにも波及するものです。

3.手先が器用になり、脳の発達を促します

特に右脳に良い影響があります。自分も四段ばしごがなかなか覚えられませんでした。覚えたと思ってもすぐ忘れるということを繰り返していました。その時はいわゆる頭で覚えている状態で、この次は親指でこれを取って…と考えながらやっているのです。これは、左脳で覚えているのです。

ですが、それでもしつこくやっていると、だんだん体で覚えているという状態に移行していきます。これが、右脳で覚えている状態です。気を付けて自分の状態を観察していると、その移行の過程が何となく分かります。スイッチが切り替わったな、と分かることがあるのです。

右脳は使うことでのみ活性化され発達させることができるので、自分のためにもあやとりを続けて行きたいと考えています。

4.二人あやとりで一緒に遊んだり、技を教え、また教わったりする中で、人間関係に良い影響があります

子供同士で仲良くあやとりをやっている姿は、まことにほほえましいものです。特に高学年の男の子と女の子が二人あやとりを一緒にやったり、技を教えあったりする姿は、とてもうれしいものです。

親子でやれば、親子の情愛が深まります。お年寄りとやれば、おじいちゃんおばあちゃんへの情愛が深まります

5.あやとりは日本の伝統的な遊びであるばかりでなく、全世界的な広がりを持つものでもあります

ですから、国際理解教育の観点からも有望です。オーストラリアから来たALTが日本の二人あやとりとほとんど同じ技を子供の頃やったことがあると分かって、彼女も私も共に驚いたことがあります。その後、一緒にあやとりをやり、楽しい一時を過ごすことができました。

6.勉強や運動が苦手な子でも、こつこつやれば、必ず上達することができます

ですから、いつもあまりぱっとしない子が輝くという、逆転現象が起こる可能性が高いのです。一昨年受け持った子で、そういう子がいました。最初の覚えは遅かったのですが、じっくり続けている内にだんだんうまくなり、半年後にはクラスでトップレベルになっていました。他の子に技を教える姿は、とても誇らしげでした。

何年か前に、テレビであやとりの天才少女を見ました。次から次へとあやとりの技を繰り出す少女の姿を、ご覧になった方も多いと思います。その子の姿は喜びと自信に溢れていました。もし、その時の脳の状態を特殊なカメラで撮影したなら、活発に働く脳の様子が確認できたはずです。そのように活発に働く脳の状態は脳の発達と活性化に大きく貢献します。それが、勉強も含むいろいろな面に、多大な好影響をもたらすのです。

そして、何よりも、あやとりによって養われた自分への自信と信頼がこの子にとって最大の宝物です。きっとこの子はいろいろなことに自信を持って前向きに取り組める子だろうなと、私は思いました。あやとりには特別な才能は必要ありませんので、親力によってこの子のようなあやとり天才少女、あやとり天才少年を生み出すのは、それほど難しいことではありません。

image by: Shutterstock.com

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5年連続でメルマガ大賞の「教育・研究」部門賞を受賞!家庭教育メルマガの最高峰。教師生活23年の現場経験を生かし、効果抜群の勉強法、子育て、しつけ、家庭教育について具体的に提案。効果のある楽勉グッズもたくさん紹介。「『親力』で決まる!」(宝島社)シリーズは30万部のベストセラー。

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【著者】 親野智可等 【発行周期】 不定期

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