台湾の総選挙は、本当に「中国の代弁者」国民党が勝利したのか?

 

蔡英文は四面楚歌です。2年前に民進党が大躍進した背景には、ひまわり革命や中国に媚びへつらう馬英九への不満がありました。それも時間とともに台湾人の中から忘れ去られ、代わりに蓄積したのは蔡英文の経済や内政への不満だったのでしょう。

小泉純一郎元首相がよく口にしたフレーズですが、台湾にとっては「時には痛みの伴う改革」が必要です。それが労基法の改正であり、年金制度改革なのです。「天然独」層は、白色テロ時代を知りません。話には聞いているかもしれません。知識としては知っているかもしれません。しかし、実感としては知りません。台湾の著名な歴史研究家であった王育徳氏のご令嬢である王明理氏の、今回の選挙に対する言葉が非常に心に刺さります。

今、台湾人が享受している平和で自由な空気は、天から降ってきたものではなく、多大な犠牲の上に手に入れたものだ。かつての国民党の一党独裁体制から民主化に生まれ変わるために、台湾人がどれだけ努力し、忍耐し、尽力したか。李登輝さんという稀有な人材が副総統から総統になるという奇跡が無ければ、有り得ない革命だった。台湾人は世界史にも燦然と輝く無血革命を成し遂げた民族であったはずだった。

 

未だ正式な独立国家とはなっていないが、苦悶の歴史からやっと脱却しつつある過程で、まさか自ら後退を選び苦しい過去へ逆走し始めるとは思わなかった。

台湾統一地方選挙結果を受けて 王 明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)

台湾の暗黒の時代を知っている我々だからこそ、今ある台湾社会を護りたいと強く願うのです。そして、それができるのは少なくとも中国の代弁者である国民党ではありません。2年後の総統選挙に向けて、習近平は高雄市長や新北市長など、国民党候補が当選した地域に対して直接的および間接的に接触してくることでしょう。そして、民進党政権を揺るがせるような地盤づくりに励むことでしょう。

民進党は200万票を失う結果となりましたが、今回の選挙には過去にない特色がありました。2大政党以外のミニ政党が多く進出してきたのです。有権者の意識にも変化があったように思います。これまでの政治意識としては、国民党と民進党の2大政党の対立がありましたが、ミニ政党が多かったことで政党への支持傾向は弱くなり、個人を支持する傾向がありました。

さらに、「買票」(選挙買収)ができなくなり、「生活関心」に大きなウエートを置くことになり、「改革」には拒否反応を示す傾向が強くなりました。古いタイプの政治家も人気が落ち、高雄市長に当選した韓國瑜に代表されるような新しい世代の政治家が台頭してきました。これらが今回の地方選挙の特色でした。再度言いますが、今回の選挙に関しては、民進党大敗で国民党大勝という政党勝敗的な見方は間違いです。

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