台湾の総選挙は、本当に「中国の代弁者」国民党が勝利したのか?

 

また、ネットでの情報操作についての報道もありました。

今回の選挙では、台湾のフェイスブックや台湾で人気がある掲示板(PTT)に対して、中国のネット部隊「網軍」から台湾世論を誘導する書き込みが多数行われたとの指摘がある。

台湾・民進党の「自滅」にほくそ笑む習近平

このほかにもいろいろとあったことでしょう。選挙期間以前からの中国のいやがらせも数々ありました。中国人観光客の台湾渡航禁止によって、台湾の観光業者を窮地に追いやったり、台湾と国交のある小国に資金援助を申し出て、台湾と断交させたりと、蔡英文政権誕生後から中国はずっとあからさまないやがらせを繰り広げてきました。

今回の選挙結果には、そうしたことも多少の影響はあったとは思いますが、今回の選挙結果を招いた主な要因は、やはり台湾の民意と蔡英文政権とのすれ違いだったと思います。

私は、蔡英文が総統になったときから言ってきたことですが、蔡英文には多くを期待してはいけない。なぜなら、台湾は中台関係もあり、急激に変わることができないからです。蔡英文は台湾を変える改革の芽を生んでくれればそれでいいと言ってきました。

そして、彼女はわずか2年間で、物事を慎重に運びながらも、労基法の改正や年金改革への着手という英断をしてきました。蔡英文の行く手には習近平という大魔王が立ちはだかっているため、彼女のやることが裏目に出るよう仕組まれる危険性も想定した上での数々の英断だったことでしょう。

そして、この2年間の展開は、まさにその通りになっていました。蔡英文が慎重な態度を取れば、決断できない総統とのレッテルを張られ、年金制度改革では激しいデモが繰り広げられ、蔡英文の支持率は下がる一方でした。

これらの出来事の裏には、「天然独といわれる若者層の存在も大きくありました。彼らは、今の台湾社会の在り方を「当然」と捉えています。今の民主的で自由な台湾社会は、生まれたときからあって当然のものであったし、それ以外にどんな社会があるのかを知りません

そんな彼らにとって、蔡英文が今ある制度をわざわざひっくり返して反発を招いているのは滑稽に映ったのかもしれません。さらに、中国はこうした天然独層の存在を味方につけて台湾を引き寄せようともしています。台湾人の若者の中国留学や就職を優遇したり、台湾企業の中国進出を優遇したりという懐柔政策をとっているのです。

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