台湾の総選挙は、本当に「中国の代弁者」国民党が勝利したのか?

 

中国が、ロシアのアメリカ大統領選のマネをして、各国の選挙にフェイクニュースを流し選挙の行方を左右しようとしていたことはよく知られています。台湾の公安関係者も、それについての具体的な証拠を数多く突き止めています。

では、中国が流したフェイクニュースがどれだけ選挙の行方に影響を及ぼしたでしょうか。これについては、「限定的という一言に尽きます。というのも、中華文化の伝統風土としては、嘘つきやほら吹きは欠かせない要素の一つだからで、誰もが知っているからです。それも、日常生活の中で欠かせないメンタリティです。

「中国ではすべてが嘘、本物はペテン師だけ」という言い方があるほど、嘘は中国伝統文化のひとつとして欠かせないものなのです。そのため、中国でフェイクニュースが多用されるのは近年に始まったことではありません。

フェイクニュースは「烏龍ウーロン消息」と言われ、国民党統治下の70年の間、台湾メディアの信頼性は1%程度でした。「疑心暗鬼」「人間不信」は、中国の国民性にもなっているほどなので、今さら中国がフェイクニュースを流したところで、台湾人は慣れているし、事前に注意勧告もさんざんあったことからも、その効果は限定的と言わざるを得ません。

ソ連はかつてバルト三国を呑み込み、ロシアもクリミアを手に入れました。中国もチベット、ウイグル、南モンゴルまでを「大中華民族」とした事例があります。しかし、それらはいずれもミニ国家か、民主的な制度を持った経験がなかった地域でした。

確かに、台湾の教育やマスメディアは、かつて中華文化一色に塗りつぶされたことがありましたが、島という独自の存在として中国からのいかなる攻略にもいかなる恫喝にも微動だにしなかったのが、この1世紀以来の台湾の歴史です。

今回、私は民進党候補者だけでなく国民党候補者の台湾語による演説を聞いていて感じたのは、中国との一体感よりも台湾を主体とする政見放送が主であり、中国以上に台湾に対してアイデンティティを認知しているということです。ブルー陣営もグリーン陣営も、色の違いの壁をはるかに超えていました。それもあって、中国からの台湾選挙に対する戦略は限定的という分析をしたのです。

選挙結果として民進党が大敗したことも、中国により選挙介入がしきりに伝えられ、マスメディアによる報道も一層激しくなっています。しかし、選挙システムや民意を問うシステムも破壊できない中国が、台湾をはじめとする民主主義国家の選挙システムにフェイクニュースという手段で大きな影響を及ぼすことはほとんどできないでしょう。

print
いま読まれてます

  • 台湾の総選挙は、本当に「中国の代弁者」国民党が勝利したのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け