まるで東芝。武田薬品、6兆8千億「高値づかみ」買収劇に不安の声

 

時代の流れに逆行する買収劇

買収の基本合意が発表された際、買収プレミアム(上乗せ幅)が買収報道前のシャイアー株価対比で64.4%にもなるということで、その高さに懸念が集まっていた。買収プレミアムは20~40%が一般的とも言われており、今回の買収プレミアムは突出している。交渉の過程でシャイアーから値を釣り上げられたためで、高値づかみを懸念する声が少なくない。

製薬業界ではリスクを承知で大手が大手を高い買収プレミアムで巨費を投じて買収するケースが珍しくないが、近年は創薬スタートアップを少ない元手で低リスクで買収するケースが目立っており、今回の買収は時代の流れに逆行していた。そういった潮流の中で、巨費・高い買収プレミアムで買収を進めることを疑問視する声があった。

有利子負債の膨張も懸念される。買収に伴う新規の有利子負債は3兆3000億円。有利子負債から手元資金を差し引いた純有利子負債は18年3月末時点の約6900億円から約8倍となる5兆4000億円(19年3月末)に一気に膨らむ見通しだ。資産売却などで有利子負債を減らしていく考えだが、当面は利払い負担が重くのしかかる

のれん買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った部分の膨張も懸念となっている。武田は約1兆円ののれんがあり、これにシャイアーがすでに抱えている約2兆1,000億円と買収で発生する分が加わり、統合後ののれんは4兆~4兆4000億円になる見通しだ。武田は減損リスクは低いとしているが、先行きが不透明で計画した収益が見込めるか不確かな状況のなか、減損リスクを完全に払拭することはできない。また、減損リスクがある無形資産が6兆3000億円~6兆7000億円に膨らむことも懸念材料となっている。

のれんの減損といえば、東芝や日本郵政を窮地に追い込んだことが記憶に新しい。東芝は米原子力事業で、日本郵政は買収したオーストラリアの物流子会社で巨額の減損処理を余儀なくされた。東芝の場合は不正会計問題にまで発展した。武田もこれらの二の舞にならないとも限らない。しかも、武田ののれんの額はこれらよりも一桁上で、減損となった場合のダメージはこれらの比ではないだろう。武田は巨額の減損が発生するリスクを抱えての船出となるのだ。

こういった状況のため、ある程度の規模が求められているとはいえ、無理に買収に走ったことに対する批判の声は根強い。それを決断したクリストフ・ウェバー社長個人に対する批判がある。14年6月から社長を務める同氏は18年3月期に12億円超という高額の役員報酬を得ており、それに見合った成果を出そうと焦ってM&Aに走ったとの批判だ。また、フェーズ3のパイプラインが少ないことにより数年後の成長が危ぶまれていたこともあり、短期的な成果を手に入れるために無理を承知で買収に走ったとする声もある。

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