まるで東芝。武田薬品、6兆8千億「高値づかみ」買収劇に不安の声

 

低い新薬の開発成功率、高騰するな開発費

製薬各社は開発費の高騰に悩まされている。新薬の開発成功率はわずか3万分の1とされ、1つの医薬品の開発にかかる費用は失敗分も含めて約25億ドル(約2700億円)かかるとする試算がある。その費用は年々増えているという。そのような状況のため、研究開発費を捻出するためにはある程度の規模が必要となる。武田はシャイアーを買収することで研究開発費を捻出する狙いがある。両社の統合により、現在を上回る年4000億円以上の研究開発投資が可能となり、医薬品の開発をより優位に進めることができるようになる。

シャイアーは希少疾患向け治療薬に強みを持つ。希少疾患の患者数は少ないが、ライバルも少なく収益性が高い。また、研究の進展により、武田が力を入れる再生医療やゲノム編集の技術と組み合わせることで新薬に結びつくことがわかっている。そのため、武田はがん、消化器、神経疾患に強みを持つが、シャイアーが加わることで新薬の開発に弾みがつき、扱う領域の拡大も見込める。

パイプライン開発中の医薬品を補強することもできる。通常、医薬品の臨床試験は初期(フェーズ1)、中期(フェーズ2)、後期(フェーズ3)の3段階で進むが、武田は製品化が近いフェーズ3のパイプラインが18年2月時点で3しかなく、手薄な状況だった。一方、シャイアーは同フェーズのパイプラインが15もあった。それらが加われば、パイプラインは安定することになる。

医薬品の世界最大市場である米国でシェアを拡大できることも大きい。日本貿易振興機構(JETRO)によると、17年の米国の医薬品市場は世界首位の3396億ドル。2位の日本(940億ドル)の3.5倍ある。武田の地域別売上高の比率は米国と日本がそれぞれ3割強。一方、シャイアーは米国だけで6割以上を占める。そのシャイアーが加われば、米国比率が5割程度まで高まる。日本市場は世界2位だが、薬価引き下げが続き成長が見込みにくい。最大市場の米国に軸足を移すことで、今後の成長を加速させたい考えだ。

これらの統合効果が見込めることもあり、武田はシャイアーを買収することになった。ただ、問題となっているのが、買収価格の高さだ。約6兆8000億円という巨費を投じることになるが、高すぎるとの声が少なくない。創業家やOBの一部が財務面でのリスクが高いなどとして、買収に反対の意向を示していた。

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