中国は、日台の一部の有志が行っている正名運動が気に入らないようですが、かつて台湾は「台湾」という名前で三回もオリンピックに参加しています。1964年の東京オリンピックでも台湾は「台湾」名義で参加しています。しかしその後、中華人民共和国が正式な中国の代表と決議されてからは、中国側は台湾も中国の絶対不可分の神聖なる固有領土だと主張し、各国もそれに応じて「承認」しました。
一方、日本では、日中国交の樹立に際し、国会でも中国の主張を「尊重する」と答弁に止まっているだけで、「中国の絶対不可分の一部」だということを「承認」するには至っていません。そのため、2020の東京オリンピックでの台湾の呼称は、「中華民国」「台湾」「中華台北」のどれなのかはまだ決まっていません。先だっての台湾での住民投票で、オリンピックでの「台湾」という呼称についての投票は結果的に否定されましたが、賛成意見は43%もありました。その声は無視できないと私は思います。
中国が、台湾をスポーツ界から排除しようとしている目的は、台湾は中国の一部という政治主張を既成事実にしたいからにほかなりません。しかし現在のトランプ政権は台湾との関係を強化すると同時に、ウイグル問題を国際社会に広く提起しています。民族自決の原則からすれば、台湾の呼称については台湾人が決めるべきであり、中国がとやかく言う筋合いのものではありません。
国境をなくして人とモノとカネの移動を自由にしようというのがグローバリズムでしたが、それによって富める国や地域にはどんどん人とカネが集まり、民族的な対立を生み、貧富の差が拡大し、かえってカオスの状態を生み出してしまいました。だから反グローバリズムが世界に拡散しているわけです。
一方、中国のグローバリズムは力によって強引に国境をなくそうというものです。香港について返還から50年間は一国二制度を守るというイギリスとの約束を反故にし、チベットやウイグルを併合したように台湾を飲み込もうとしています。さらには、他国に経済協力を持ちかけ、借金漬けにして、他国の空港や港湾を乗っ取ってしまう。それが中国式のグローバリズムであり、言い換えれば「侵略」なのです。
そして中国は同じことをハイテク分野でも行おうとしているのです。国家の力とカネに支えられた国有企業が海外で欧米企業を買収し、強制的に技術移転を行おうとしており、だから欧米諸国は警戒し、通信分野を中心に、中国企業を排除しようとしているのです。中国の本質がわかれば、中国式グローバリズムがいかにとんでもないことかがわかるはずですし、台湾の未来は台湾が決めるということは、きわめて「常識的」な話なのです。
image by: shutterstock.com









