百田尚樹『日本国紀』に疑問。私が愛国心を感じなかった理由

 

▼歴史を知らなくても通史が書ける

この本に意義があるとすれば、「歴史を知らなくても日本の通史が書ける」ことを世に知らしめたことでしょうか。

教科書を1冊買ってきたら、あとはネット情報を引っ張ってきて切り貼りをするだけです。ズブの素人でも半年足らずで1冊本が書けてしまいます。もちろん、売れるかどうかは別問題です。

知識はあまりないけれど、歴史の本を書きたくて仕方がない人には勇気を与えてくれる本だと思います。

▼専門外だからこそ期待できる発想・解釈

私は、歴史に疎い人が通史を書いてもいいと思っています。専門家には出てこない柔軟な発想、突飛だけれどハッとさせられる解釈が生まれる可能性、そして期待感があります。

想像力豊かなベストセラー作家が織りなす通史となれば、仮に著者が歴史に疎かったとしても非常に興味をそそられます。出版前からこの本が話題になっていたのも、そうした期待感があったからでしょう。

▼ベストセラー作家が書く通史への興味

『日本国紀』の「序にかえて」(序文)は、

「日本ほど素晴らしい歴史を持っている国はありません。」(p.2)

の一文から始まります。

世界に誇れる我が祖国日本がどのように描かれるのか、どんな素晴らしい日本が目の前に現われるのか。私たち読者は期待に胸を膨らませます。

・・・・・ひと通り読み終えて、私は複雑な心境になりました。

「これを読んで、本当に日本に誇りを持てるようになるのだろうか?

正直な感想です。

▼「正式な国号」の起源をなぜ特定できない?

ひとつ例を挙げておきます。私の手元にある『日本国紀』(2019年1月15日第7刷発行)には、「日本という国号の誕生について、次のように書かれています。

「『日本』という呼称が使われ始めたのは七~八世紀頃といわれているが、いつが正式な始まりかははっきりしない。(中略:中国や朝鮮などの史料を引用して諸説を紹介)・・が、真偽は不明である。」(p.55)

これは不可解です。特定できないはずがありません

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