阿曽山大噴火が裁判所で見た、スリルを求めて露出する男

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裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第32回!
法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!
罪名 公然わいせつ
被告人 65歳無職の男性
事件は今年の1月25日午前3時44分。
足立区の路上で、被告人が全裸になり陰茎を露出したという内容。

ニュースだと、昨年末から被告人に似た男が裸で歩いている目撃情報があるので、警視庁は余罪について調べているって報道だったんだけど、起訴されたのはこの1件のみ。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は中学を卒業後配送業などの職を転々とし、犯行時は生活保護を受給して一人暮らしだったという。

前科は7犯で、そのうち2犯が同種前科。

昨年の公然わいせつでの罰金判決が言い渡された後も、被告人は全裸で自宅アパートの周りを出歩いていたという。

そして、犯行当日。被告人は全裸で自分の部屋を出て、アパート出入り口付近で放尿。そのまま路上を歩いたという。

その姿を目撃した近所の住民が110番通報し、警察官が現行犯逮捕したというのが事件の流れです。

調べに対し被告人は

「ストレスが過度にかかり、爆発して及んでしまった」

と、ストレスが原因だと供述し、

「服を着ないで外を歩くことで、非日常感やスリルや背徳感を味わって、驚くほどストレスがなくなった。この状態を火曜サ◯ペンス状態と呼んでいて、犯行を行うときは火曜サ◯ペンス状態にあった」

と答えたそうな。

今はもう放送していないけど、2時間ドラマの代名詞的な番組、火曜サ◯ペンス劇場。

確かに非日常感が味わえるし、犯人視点でテレビを見れば背徳感がありますもんね。言いえて妙。

この手の事件は、人前で裸になったり陰部を見せたりってパターンが多いんだけど、本件は自宅を出るときから裸ですからね。

圧倒的な非日常感。

想像を絶する背徳感もあったでしょう。

たぶん、警察官に捕まった瞬間「テテテテ、テテテッ、テーテー」ってCM前のアノ効果音が自分の中で流れてきてそうだし。

まさしく、火曜サ◯ペンス状態。

そして、被告人質問。

まずは弁護人から。

弁護人

「原因はスリルや背徳感を味わいたいからと答えてますけど、過去2回の前科も同じ理由ですか?」

被告人

「大体、そんな感じです」

弁護人

「なぜ、繰り返すんですか?」

被告人

「2年ほど前に生活保護を受けるようになりまして。それまでは仕事してたんですけど、2年前から外と接しない生活で、自分なりにストレスがたまってしまったと思うんですよ。自分勝手でやってしまったと」

弁護人

「繰り返さないためにどうしますか?」

被告人

「精神的な病気かもしれないので、そういう専門のお医者さん探して診てもらう必要あるのかなと。もちろん病気のせいにはできませんけど。一因かなと。もうひとつは、仕事に打ち込んでるときはそういう気持ちがでてくる隙がなかったので、クリニックに行くのと仕事を探します」

治療と職探しをすると約束です。

弁護人

「住んでたアパートは?」

被告人

「退去だと。解約になってます」

弁護人

「今後、社会復帰後はどうします?」

被告人

「えーーっと……とりあえず、アノ、なんて言うんですか……」

弁護人

「更正緊急保護ですね」

被告人

「それに頼らざるをえないと思うんですよね。住ませてもらってる間に、仕事を探して受診します」

いろんな人が住む寮みたいなところで、半年間寝泊りすることになるので、『外の人と接点がない』というストレスはなくなりそうですね。

次は検察官から。

検察官

「調べだと、去年11月ごろから全裸で出歩くようになったと。なぜですか?」

被告人

「足の骨を折ったのもあるんです。入院したときに、“自分で歩くしかない”“これ以上は治せないから”って先生に冷たいこと言われて、それで部屋にこもっちゃって外界と接することが……」

ストレスがたまるきっかけは骨折だったようです。

冷たい言い方されてむきになり、部屋の中にいたけど、裸で出歩くと。

検察官

「ストレスを解消するときを火曜サ◯ペンス状態って呼んでたんですか?」

被告人

「取調べのときの人が、私の子供くらいの歳なんですよ。わかりやすいように説明してたら、向こうから言ってきてまぁそうですかねって話になったんです」

火曜サ◯ペンス状態は被告人発信の造語じゃなく、警察官が言い出した言葉だったようです。

非日常、スリル、背徳感って話を聞いて“火曜サ◯ペンス劇場”が連想ゲームのように思い浮かんだんでしょうかね。

検察官

「更正緊急保護って話してましたけど、こういうこと繰り返してると無理なんです。ちゃんとできます? やめられます?」

被告人

「はい!」

と再犯しないことを約束して質問終了。

最後は裁判官から。

裁判官

「もし警察官にみつかってなかったら、どこかに行くつもりだったんですか?」

被告人

「いや、そういうつもりはなかったです」

裁判官

「じゃ、アパートの入り口でおしっこして、その後はどうしようと?」

被告人

「部屋に戻ろうかなって」

どうやら戻ろうと思ってたようです。

裁判官

「やっぱり、他人に全裸を見られるのは恥ずかしいんでしょ?」

被告人

「ま、そうですね」

裁判官

「防犯カメラ映像の写真見ると、人がいないかを確認してから外に出てるようなかんじですもんね」

被告人

「はい」

裁判官

「確認してた?」

被告人

「はい」

裁判官

「もし人がいたらどうしてましか?」

被告人

「そりゃあ、引っ込みますよ」

裁判官

「はずかしいわけでしょ?」

被告人

「人に見せるもんでもないし」

たしかに犯行時刻は深夜というか早朝というか人通りが少ない時間帯ですからね。見せつけて女性の嫌がる表情が見たかったという動機の人も多いんだけど、被告人は違うわけで。

裁判官

「明るい時間に気晴らしにでるとかは?」

被告人

「骨折してたのもあって」

裁判官

「アパートの周りにいるだけでも気晴らしになるんじゃないですか?」

被告人

「考え付きませんでした」

と、今後のストレスがたまったら昼間に外に出たほうがいいと代替案を提案して質問終了。

このあと、検察官が懲役4ヶ月を求刑して閉廷でした。

──もし、この裁判がフィクションだったとして。

私は被告人の言葉に対して───

もし、気象予報士なら1月25日の最低気温は2.8℃だけどって心配しそうだよなぁ。

ま、3月7日に実際に行われた裁判なのだが

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