竹中イズムもアベノミクスも間違い
そのように、そもそも日本が置かれている現状への時代認識と問題設定が間違っているので、それに対する処方箋を規制撤廃=市場万能主義や金融緩和ショック路線など、いずれも米国起源の過激なアイデアを持って来て何とかしようという発想も、通用しないのは当たり前である。
竹中平蔵氏が深く関与した不良債権処理から規制緩和と対外開放という路線は、結局のところ長銀や日債銀をはじめ日本の優良な金融ファシリティーを血税を用いて救済した上で外資系ファンドに売り飛ばすという売国的行為でしかなかった。それが日本経済の体力喪失を加速させた。
次に出てきたアベノミクスは、そもそも人口減が始まっているがゆえに慢性的な需要不足に陥りつつある国内経済の現状を、マネー供給の不足による「デフレ」だと誤認し、日銀による金融大緩和でマネーをジャブジャブにすれば人々が金余りだと錯覚して消費に走るので景気がよくなるという狂った政策に突き進んで失敗した。下表は、アベノミクスの6年間に何が起きたのかを示す基本的な数字で、これを見ると、日銀がいくら通貨供給量を増やしても全金融機関が日銀内に設けている当座預金にお金が滞留するばかりで、決して世の中には出回って行かないという構造が分かる。
■アベノミクス「異次元金融緩和」の不都合な真実
2013年3月→→→2019年2~3月
マネタリーベース 138兆円 504兆(+366兆)
日銀の国債保有高 165兆 478兆(+313兆)
金融機関日銀当座預金 47兆 386兆(+339兆)
銀行預貸ギャップ 214兆 278兆(+ 64兆)
企業内部留保 306兆 446兆(+140兆)
こうして、今になって振り返ると、小泉=竹中と安倍=黒田がこれほど無知無能でなければ、平成30年を経た日本経済はもう少しマシなところに止まっていたのかもしれないとは思うけれども、実際にはこんな程度でウロウロし、まだ自分の21世紀を見いだせないでいるのがこの国である。
image by: 2p2play / Shutterstock.com
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年4月8日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。
こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー
※ 初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。
2019年3月分
- [Vol.386]平成の30年間を振り返る・その1──ポスト冷戦の国際秩序づくり(2019/3/25)
- [Vol.385]失敗に終わった安倍「北方領土」交渉(2019/3/18)
- [Vol.384]「八方塞がり」とはこのことか!平成末、安倍政権の苦悶(2019/3/11)
- [Vol.373]“決裂”しなかったのがせめてもの成果─という情けない米朝首脳第2回談の結末(2019/3/4)
※ 1ヶ月分864円(税込)で購入できます。