「うちの嫁はんの女友だちを見ていると、まず8割は虫のいい女です。地道に働いて、なるべくお喋りをしない、という覚悟がない」。書かんでもいいことを。田舎の母親は親類の男から「あんたの伜に悪う書かれた」と棒で殴られ半殺しの目にあわされた。「小説を書くにはある程度覚悟はいります」って……。
「小説を書きたい」という71歳の向学心ある年金生活者。回答は「善人には小説は書けません」。人の頭脳は4種類、頭のいい人、頭の悪い人、頭の強い人、頭の弱い人。この中で絶対に小説を書けないのが「頭のいい人」だ。人には真、善、美、偽、悪、醜の6要素が備わり、頭のいい人は偽、悪、醜について考えると頭が痛くなるからだという。善人と頭脳の種類は別の話だと思うがなあ。
「人生の目標の立て方は?」と真摯に問う46歳・主婦。回答はまず「中高年に人生の目標などなくて当然であるから、迷いの段階で必ずより困難な道のほうを選んでいけば、そこから新しい道が開けてくる」と格好いいこと、無責任なことを言いながら、結局は自分一人で何かを楽しむことを見つけることが大事です、と平凡にまとめるんだから、著者らしからぬ投げやりな対応である。
「車谷長吉の人生相談」と銘打っているが、質問者によりそった優しい回答者とは思えない。質問を無視して自分語りをすることが度々。先生のことなんか聞いてません、もっとわたしの悩みを聞いてください、対面でなら相談者はきっとそう言うだろう。車谷の小説はこわいからわたしは近寄らない。車谷長吉(くるまたに ちょうきつ)は2015年に69歳で没。
編集長 柴田忠男
image by: Shutterstock.com