軍事アナリストが暴く「ボーッとしすぎ」なマスコミの取材姿勢

 

私自身、1984年に在日米軍を調査した際、在日米軍報道部に申請し、その許可のもとに基地司令官の聞き取りを行い、資料の提供を受けましたが、当時はそのことを不思議ともなんとも思っていなかったからです。

しかし、1990年5月にTBS『筑紫哲也ニュース23』で東西ドイツ軍、ソ連軍とともに西ドイツ駐留の米軍基地を取材したとき、核弾頭装備のランスミサイル部隊の取材だったのに米軍側の許可が不要で、西ドイツ国防省の女性担当官が同行しただけでした。そこから疑問がむくむくと頭をもたげてきたのです。

そして、それに対する回答、つまり日本側の無知をよいことに米国側もいい加減な受け答えをしてきた様子は、2009年7月1日に那覇市で開かれた日本 JC 主催の「日米地位協定を考えるJCフォーラム」で明らかになりました。

私が基調講演を行ったあと、沖縄総領事のケビン・メア氏とディスカッションをしたのですが、私が西ドイツの例を挙げると、メア氏は「米軍側の許可が不要だったのは、米国と西ドイツの共同使用施設だからです」と答えたのです。

私は疑問をぶつけました。

「しかし、日米共同使用施設になっている青森県三沢基地を取材や調査するとき、米軍側の許可がなければ入れませんが、日本側の許可は必要ありません。それはなぜですか?」

メア氏から答えはありませんでした。

ここでマスコミは突っ込まなければなりません。その問題意識すらない結果、那覇でのフォーラムの記事にしても、900人の聴衆が集まったにもかかわらず、各社とも行事が行われたことを報じる平板なものでしかありませんでした。

そんなことだから、「日米地位協定は他の国の地位協定よりマシ」だと外務省や米国側に言われると、それをそのまま垂れ流すことになってきたのです。

朝日新聞の続報を期待しています。(小川和久)

image by: dotshock, shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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