米Amazonが展開するレジに並ぶことなく利用できるコンビニ店「Amazon Go」がついにニューヨークにもオープンしました。オープンに先立って、シアトルの1号店と2号店を視察していた『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者、りばてぃさんが、ニューヨーク店の特徴を紹介してくれました。シアトルではちょっと残念だった品揃えに工夫が感じられ、レジレスが売りの「Amazon Go」で、現金支払いが可能になっていたりと、進化と変化が見られたようです。
ついにAmazon Goがニューヨークにオープン!!
5月7日(火)朝7時、ニューヨークのマンハッタンに、ついにレジレス・コンビニのAmazon Goがオープンした!!!場所はウォール街やフリーダムタワー至近にあるオフィスや小売店が入る複合商業施設のブルックフィールド・プレイス内。
この施設は吹き抜けの天井が気持ちいいパブリック・スペースがあり、建物裏側は湾に沿った遊歩道がある。近所に住むニューヨーカーや観光客の憩いの場としても愛されている施設である。
以下、ご参考までにブルックフィールド関連の記事をご紹介。
ご参考:
● NYの注目の新しいフード・コートの1つ、『ハドソン・イーツ』(Hudson Eats)
● ブルックフィールド・プレイスでモダンダンスのショーに遭遇
● NYに高さ12mの巨大うさぎのパブリックアート登場中、”Intrude” by Amanda Parer
● アメリカの伝統的ファッションを救った日本のファッション?!~鎌倉シャツNY2号店の様子ほか
もともと人が多く集まるビルの中にオープンしたため、事前告知がまったく無かったにも関わらず、早速初日から長蛇の列ができ大きく話題となっている。
ご参考: ● Surprise Amazon Go Store Opening Causes New Yorkers to Do What They Do Best: Line Up
早速、視察してきました!…と言いたいところだが、仕事が立て込んでいたためまだ行けていないので、シアトルのAmazon Goとの違いやニューヨークならではの特色をまずは整理してお伝えしよう。
(1)現金払いもできるAmazon Go
Amazon Goと言えば、レジレスが最大の特徴だが、ニューヨークの第1号店は、Amazon Go初となるの現金払い可能な店舗となった。シアトルやサンフランシスコにオープンしているAmazon Goでは現金払いができない。
専用アプリを事前にダウンロードし支払い方法を登録(たいがいクレジット・カード)。入店の際に入り口の機械にアプリをかざすだけで店を出る際は何もしなくても自動的に手にしている(またはバックなどに入れた)商品がアプリに入り、登録済みの支払い方法で自動的にお会計がされる仕組み。このコンセプトが発表されたときは、まさに「未来の小売」をIT大手のアマゾンが具現化しようとしていると大騒ぎになった。
そして、シアトルの1号店がオープンした直後は、レジに並ばなくていいのがウリなのに、人が殺到したことで、入店までに店舗外で待つ長い行列ができ、そんな様子もニュースになった。
とにかくいろいろと話題だった店がついにニューヨークにオープンしたということで、当然のことながら店外には長い行列ができ大盛況となった。そして、Amazon Go初の現金払いができる店としても大きな話題となっている。
ちなみに、シアトルのAmazon Goに行ったが、店の魅力は、アプリを使った自動支払いができるレジのないレジレスの仕組みだけだった。店としては品揃えは微妙で、ニューヨークでオープンしても果たしてどうなるのだろうか?と思っていたが、そこはアマゾン。ちゃんとニューヨーカーの好きなものを入荷している。
シアトルのAmazon Goについては、過去のメルマガで書いており、まぐまぐニュースにもなっているので、以下、どうぞ。
ご参考: ● レジレスの「Amazon Go」に行ってみたら、品揃えが残念だった件
(2)あのクロナッツの生みの親の商品も!!
ニューヨーク1号店となるAmazon Goには、地元の人気店の商品は様々入っている。
まず、クロナッツの生みの親、ドミニク・アンセル・ベーカリー(Dominique Ansel Bakery)のスイーツ商品だ。クロワッサンとドーナツをかけあわせて、表面はさくっとしているのに、中はドーナツのもちもち感。そして、絶妙な甘さのクリームが入っている。
発売直後から一気に人気となり、店が開くずっと前の早朝から行列。開くと同時に売り切れるという、異例の大ヒットを遂げたスイーツである。
そして、クロナッツを作ったドミニク・アンセルさんは、「全米トップ・ペストリー・シェフ10人」にも選ばれ、3つ星レストランでの経験も持つ凄腕のペイストリー・シェフ。そんな彼が、2011年にSOHOにオープンした小さなフレンチ・ベーカリーが、ドミニク・アンセル・ベーカリーなのである。
ご参考: ● 今、NYで大人気のドミニク・アンセル・ベーカリーのクロナッツ
このドミニク・アンセル・ベーカリーのスイーツが食べたかったら、ニューヨークでもSOHOかウェスト・ビレッジの店にいくかしかなかった。けど、ブルックフィールド・プレイスのAmazon Goでも本店の品揃えとまでは行かないが、ちょっとしたスイーツ商品を買うことができるようになったのだ。
他には、マグノリア・ベーカリーにエッサ・ベーグル、ホールフーズに入っていることでお馴染みの源氏寿司のお寿司も多数取り扱われている。
ご参考:
● NYカップケーキの代名詞 マグノリア・ベーカリー(Magnolia Bakery)
● ニューヨークのべーグル屋さん(1) エッサ・べーグル(Ess-a-Bagle)
Amazon Goのニューヨーク1号店は上述したように、人が多く集まる施設内にオープンしたので、今後も引き続き盛況が続きそうだ。
ところで、レジレスか現金払いかについては賛否両論でており、クレジット・カードを持てない人を差別していることが強調されて報じられているが、あまりそういった主張ばかりに気をとられると本質を見失うのではないかなと感じている。 政府機関としては人々の平等を維持するために規制する動きがあるのは当然だ。
ご参考: ● フィラデルフィアでは「現金お断り」すると条例違反!
事業者側の視点としては、現金を取り扱うことで生じる様々なコストや手間が増えるという悩みはある。カード支払い以外の客を受け付けないというある意味、機会損失があっても良いと選択するほど現金取り扱いの手間やそこに費やす人材や人件費は大きい。だから、事業者の立場としては、カード支払いオンリーのほうが様々なリクスを軽減できるから画期的な方法と感じる。
でも、消費者の立場で実際にAmazon Goを利用すると、平等かそうでないかの問題以前に、アプリでしか支払うことができないのは意外と不便なのだ。
常に、アプリを入れたスマホを持っていないといけない。でも、スマホも何も持たずにクレジットカード1枚でとか、現金20ドルだけ持ってとか、アップルウォッチのアップルペイで支払いたい、とか思うときだってある。しかも、その方が身軽だ。
でも、Amazon Goではアプリでしか支払うことができないので、それができない。便利を追求したのに、逆に不便な状況とも言えるのである。
今回、現金払いも受け付けるようになったのは、カード支払いができない人にとっては平等になったが、カード支払いできる多くの人たちにとっても支払い方法の選択肢が増えたので、より便利になったのではないだろうか。
この点では実は、カードやSuica、現金など様々な支払い方法が用意されている日本の多くの小売店のほうがずっと便利であると言えるかもしれない。
おそらく現時点では、Amazon Goではアプリでの一括管理しか技術的に難しいということなのだろう。将来的には別の方法で様々な支払いに対応できるようになると良いのではと思うが、今後どのように支払い方法が発展していくのか非常に興味深いところである。
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