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会社に届いた個人宛の親展封書。開封したら会社は罪に問われる?

「極秘文書」とまではいかないにしても、宛名の人以外に開封されることを否とする内容の場合に印す「親展」。そんな封書が会社に届いた際、誤って開封してしまったとしたらどのような罪に問われるのでしょうか。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』で詳しく解説しています。

親展

今日は、溜まっていた仕事も動きだして、深田グループリーダーの就業規則の打合せに同行したときの話…。


深田GL 「今日は、就業規則の打合せで長丁場になりますが、よろしくお願いします」

O社部長 「こちらこそよろしく頼みます。就業規則では個人情報保護についても規定がはいっていますが、個人情報保護って、どんどんうるさくなって来ていますよね。どこまで気にしないといけないんでしょうか」

深田GL 「確かに、マイナンバーやストレスチェック、健康診断の扱いなど人事労務については、ますます厳しくなってますね」

O社社長 「そうなんですよ。たとえば、個人宛の親展扱いの郵便が届いた場合開封したら罪になりますか?

新米 「『親展』って、宛名となっている本人が自分で封を切って読んでほしいという扱いのことですよね?」

深田GL 「そうだよ。以前、ビジネス文書検定で勉強しただろう。極秘文書まではいかないにしても宛名の人以外に見られたくない内容の場合に印しておくのがこの親展だ」

O社社長 「会社宛ならわかるけど、個人宛の封書が届くと扱いに困ってしまってね~。『O社 ○○課 課長 ○○様』という宛名だと会社に来ている封書だとわかるけれど、「O社方 ○○様」だと個人宛だよなぁ~」

新米 「O社方とまでは書いてなくても、『O社 ○○様』だと微妙ですよね。深田リーダー、会社宛で届いているんだから、封しちゃってもかまわないですよね?」

深田GL 「いや、それは…内容によっては知られたくないものもあるだろうし…」

O社部長 「その人のプライバシーに関わる内容、例えば身体情報だったり、クレジットカードがだったり…。送り主が気を遣って親展表示にしてくれているものですよね。社長、やっぱり駄目なんじゃないですか?」

O社社長 「総務なり、郵便担当者がうっかり開封しても会社が責任とらないといけない、訴えられる可能性もあるなんてことだと、困るよな~。会社宛なんだから、そこまで心配しなくていいでしょ、ね?深田さん」

深田GL 「親展の開封は、『信書開封罪という刑法に規定されている秘密を侵す罪』の一つにはなるんです」

O社社長 「信書っていうと…」

深田GL 「『信書』とは、特定の人に対する自己の意思・思想・感情の伝達を媒介すべき文書のことを言います。『文書』とは、文字、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物のことです。個人から国や地方公共団体に宛てた信書、国や地方公共団体から個人に宛てた信書もこの犯罪の対象になりますが、国・地方公共団体同士の信書のやり取りは、この犯罪の対象ではありません」

O社部長 「そういえば、信書のことは、以前、クロネコヤマトのメール便を使っていた頃勉強したことが少しありますねー」

新米 「(おっ、ボクも一緒だ…)」

深田GL 「信書の封をあけることに『正当な理由』があれば、違法性が阻却され、信書開封罪は成立しないのですが…」

O社部長 「正当な理由って?」

深田GL 「『正当な理由』がある場合とは、法令上認められている場合や権利者の承諾・推定的承諾がある場合緊急避難が必要な場合などです」

O社社長 「ふむふむ…」

深田GL 「家族の場合を例にすると、ケースバイケースともいえますが、一般的には未成年の子供宛ての信書は親権の範囲内で親が開封をすることは可能です。子どもの学校から送られてきた手紙には『宛名』に父親の名前しか書いていないこともありますが、母親も子の親権者ですから母親が開封することには、『正当な理由がある』と言えます。夫宛てに送られてきた光熱費の請求書等も家計を預かる立場なら『正当な理由がある』と言えるでしょう。ところが、いくら仲のよい家族であっても、友人からの手紙などの開封行為は、『正当な理由は認められにくいと言えます」

新米 「家族の例はわかりやすいですね」

O社社長 「会社の場合は、どうなるんだい?」

深田GL 「こちらもケースバイケースですが、一般的には、会社宛てに送られてきた業務にかかわる信書の場合、会社の上司や総務など開封の権限がある人が開封することは正当な理由がある』と言えます。これは、『担当A様』という宛名の書き方であっても同じことです。会社内では、郵便物開封のルールを決めることが望ましいですね」

O社社長 「個人宛の封書は、親展なら罪になるんだろうなぁ…」

深田GL 「そうですね。会社に届いたものでも、個人宛の私的な信書を開封すると、『正当な理由があるとは言えません。私的な信書でも、個人の住所を知らないため会社宛てに送られてくる場合もありますし、家に送ってほしくないものを会社に届けてもらう人もいるかもしれません。このようなものは、封を開けずに本人に渡すようにしましょう」

O社社長 「うーん、やっぱりそうなるんだね。借金の請求書なんてのも有り得るだろうしね」

深田GL 「ただし、信書開封罪には過失犯を処罰する規定はないんです。業務に関するものだと勘違いして開封してしまった場合には、故意ではないということで、犯罪とまではいきません。もっとも、『私的な信書かもしれないがそれでもかまわない』という考えで開封をしたのであれば、別ですが…」

O社部長 「担当者部署には気をつけるように言っておかなければなりませんね」

深田GL 「ちなみに、信書開封罪は封を開けただけで犯罪が成立します。封筒の中の信書を実際に読んだかどうかは別問題です」

O社社長 「そっかー、読んだのかではなく、開けたのかなんだね。訴えられるってことはあるんだろうか?」

深田GL 「信書開封罪は親告罪なんです。親告罪というのは、被害者などから告訴がなければ公訴提起ができない犯罪のことです。信書開封罪は、どちらかというと軽微な犯罪であると言えますが、告訴され被疑者になってしまう可能性もあります。いずれにしても、社内の郵便ルールは、決めておくのが良いですね」

O社社長 「わかりました。注意します」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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