危険な9段も。東大阪市の小中学校で組体操ピラミッド強行に怒りの声

2019.05.30
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by gyouza(まぐまぐ編集部)
※画像はイメージです※画像はイメージです
 

春の運動会が全国で行われている今、大阪府東大阪市のある小学校運動会に「組体操」の「7段ピラミッド」と「5段タワー」の演目が実施されるとして、児童の保護者たちが危険性を理由に中止を訴えているというSNSへの投稿が29日夜にあり、波紋を呼んでいます。同じ東大阪市の中学校では昨年、「9段ピラミッド」が実施されていたことも判明しており、生徒の保護者や識者からは怒りの声が挙がっています。吉村大阪府知事は30日、共同通信の取材に対して、東大阪市立の3つの小学校が「7段ピラミッド」を実施しようとしていることについて「反対」を表明しました。

骨折や負傷の危険性が指摘されている「組体操」の演目実施がなくならないのは何故なのでしょうか? MAG2 NEWSでは今回、この問題について独自に取材しました。

年間8000件も起きていた「組体操」による負傷事故

2016年にスポーツ庁が全国の教育委員会などに送付した「事務連絡」に記載されている、独立行政法人日本スポーツ振興センターがまとめたデータによると、2011から14年度の間で毎年年間8000件を上回る負傷事故が発生していました。そのおよそ73%が小学校で起きた事故と衝撃的な報告がなされています。こうした組体操の危険な演目を禁止する自治体もある中、本当に今も東大阪市の学校では実施されているのでしょうか。もし事実であれば理解に苦しみます。

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image by:photoAC

しかし、組体操にも大きな転換期が訪れます。2015年9月下旬、大阪府八尾市の「市立大正中学校」の運動会で、1年から3年の男子生徒157人が参加した「組体操」の人間ピラミッドが崩れ、1年生の男子生徒が骨折。ほか生徒5人が軽いケガを負う事故が発生していました。このピラミッドは10段」もあったといいます。その後、八尾市教育委員会は2016年2月1日に、高さの上限を「ピラミッド」は5段、「タワー」は3段とすべきだと提言することを決定しました。

こうした事故例などを受けて、すでに大阪市教育委員会は2017年度から、同市内の小中学校において組体操の「ピラミッド」と「タワーを禁止しています。

組体操による事故の多発という事態に、政府も少しづつ動き始めています。スポーツ庁の「政策課」学校体育室は2016年3月、「組体操等による事故の防止について」と題した通知を各都道府県・指定都市教育委員会などに宛てて出しました。

組体操等による事故の防止について(2016年、スポーツ庁 政策課 学校体育室の通知、PDFが開きます)

その中で、

「タワーやピラミッド等の児童生徒が高い位置に上る技、跳んできた児童生徒を受け止める技、一人に多大な負荷のかかる技など、大きな事故につながる可能性がある組体操の技については、確実に安全な状態で実施できるかどうかをしっかりと確認し、できないと判断される場合には実施を見合わせること」

と、危険な演目については実施の見合わせを促しています。この通知の影響により、2017年度の小中学校の負傷人数4418件と、2015年度の7702件のおよそ半分近く(43%)まで減少しました。しかし、明確な「実施の禁止」は出されておらず、現在も東大阪市をはじめ、一部の小中学校では、これらの演目が危険性の高い「段数」で実施されているのが現状です。

やらせているのは保護者?学校側? 専門家に取材

ネット上では、「一部の保護者が、組体操にピラミッドやタワー無しでは華がない、と言って、これら危険性の高い演目の実施を望んでいるからだ」という意見を目にしましたが、こうした保護者からの声を受けて演目から外さないのか、それとも学校側が勝手に続けているだけなのか、疑問が残りました。

そこで、小中学校における組体操の危険性について長年研究し論文を発表している大阪経済大学名誉教授西山 豊氏(70)に、MAG2 NEWSがいくつかの質問をお送りしたところ、メールにてご回答してくださいました。

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西山 豊氏Twitter(@ma85003)

西山豊氏ホームページ「Homepage of Yutaka Nishiyama」組体操関連ページ

ーー組体操の危険な演目について、一部の保護者から「やらないと華がない」という意見があり、これら危険性の高い演目が実施されているという話をネットで目にしましたが、そういった事実はございますか?

西山「そのような事実は確認されていませんし、公表された調査データもありません。事故が起こった場合の、学校側の逃げ口上に使われています」

ーーこうした危険な演目を実施しているのは学校単位、あるいは体育教員個人の単位の主導によるものでしょうか?

西山学校単位です。体育教員主導によるものであっても、責任は当該校の校長にあります」

ーー今後、行政や学校は、どのような対応をとるべきとお考えでしょうか?

西山「行政側はスポーツ庁の通知を遵守してほしいと繰り返すだけです。学校は、いままでやってきて事故がなかった、注意してやれば問題ない、伝統を守るということで、実施するでしょう。重大事故が起こったときは、生徒がやりたがったので、と逃げるでしょう。行政、学校は「学校保健安全法」(26条-30条)により、児童の生命と安全を守る義務があります。安全が確保できない場合は実施を見送るべきです」

死亡事故も。危険性を認識していない学校や自治体

西山氏によると、2018年におこなわれた東大阪市のとある中学校の運動会において、組体操で「9段のピラミッドをSNS上で確認しているということです。この事実は、同校に通う生徒の保護者が投稿したことで発覚しました。「東大阪市は9段ピラミッドを実施する学校が多かった地域(西山氏)」とのことで、この中学校に限らず、高段数のピラミッドやタワーを実施している学校は多いのかもしれません。

西山「スポーツ庁の通知以降は自粛する学校が多いのですが東大阪市はそれを無視しています。2018年に東大阪市教育委員会に意見をあげましたが、当該校に通知するという程度の回答でした。もし事故が起きたら、教育委員会は学校側に通知したはずだと逃げるでしょう。当該校も保護者がやってくれというので実施した、生徒がやりたいといったので実施した、と逃げるでしょう。2016年6月に広島の中学校で死亡事故が起こっていることを知らないのだと思います(編集部註:現在、裁判中)。特に、兵庫県、同県西宮市、大阪府東大阪市などで危険な組体操が実施されていますので、次に重大事故が起こるとすればこれらの地域です」

最後に、西山氏がネット上に公開している「都道府県別組体操事故統計(2018年版)」という貴重なデータをご紹介して、この報告を終えたいと思います。ここには、私たちが知らない日本の小中学校における衝撃的な事実が示されています。ご一読されることをお勧めいたします。

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同統計データの一部内容

● 都道府県別組体操事故統計(2018年版) ※PDFが開きます

東大阪市の2つの小学校では今週末の運動会で、危険な演目を含んだ組体操が実施されようとしています。今回の記事が、今後の大きな事故を抑止する一助になることを願ってやみません。

続報:大阪府東大阪市教育委員会は31日、今週末に予定している市立小3校の運動会の組み体操で、児童らが四つんばいで積み重なってつくる「ピラミッド」の段数を、7段からそれぞれ6~3段に減らすと明らかにしました。共同通信が速報で報じました。


「組体操」の危険性に関する報道やTwitter上の声

※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。

image by: Josh Berglund from Richardson, United States [CC BY 2.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

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