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「日本と中国どっちが大事?」の問いにロシア人が語る戦略的回答

6月5日に開かれた中ロ会談で、北朝鮮問題などを筆頭に「中ロが対米政策で共闘する方針」である事が公表されました。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、近年の中ロ協調路線が、世界覇権の米国一極集中型から米中二極化へ変化させたきっかけとなった事実を詳しく解説し、現在の日本や米国に必要な戦略を記しています。

中ロ関係に関する「大いなる勘違い」

日本の情報空間を見ていると、時々「すごい勘違いをしているな」と思うことがあります。その一つは、「ロシアは中国が大嫌いこの二国が組むことはありえない!」。皆さん、こんなことを信じていないでしょうね(より正確にいうと、ロシアは中国が嫌い。でも二国が組むことはありえますよね?たとえば、チャーチルはソ連が大嫌いだった。しかし、ヒトラーに勝つためにスターリンと組みました)?

RPEの見解はどうなのでしょうか?昔からの読者さんはご存知ですが、私は07年に『中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』という本を出しています。この本の主張は、「ロシアと中国は05年、【事実上の同盟関係になった」です。そして中ロ同盟が08年、「アメリカ一極時代を終わらせた」。その後世界は、「米中二極時代」に突入しました。

なぜそういう話になるのか、詳しくは「中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日」を読んでいただければわかります。しかし、1時間ぐらいでざっくり理解したい人は、無料レポート

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で、アメリカ一極時代崩壊後中ロ関係はどうなったの?これ、一時期停滞しました。というのは、08年からはじまった「100年に一度の大不況」でアメリカは沈んだロシアも沈んだ。なぜ?原油価格、08年夏は140ドルだったでしょう?それが、リーマンショック後30ドル台まで大暴落した。一方、中国は一人勝ち」して、アメリカに迫る超大国になった(2010年以降中国はGDPでも軍事費でも世界2位)。つまり、米ロは負け組。それで、09年からは米ロ再起動時代」がはじまったのです。

この時の大統領は、アメリカ大嫌い男プーチンではない。ジョブズから直接もらったアイフォンを「家宝」にしているメドベージェフ。米ロ関係は、しばらくメチャクチャよくなった。相対的に中ロ関係は停滞しました。

しかし、2012年プーチンが再び大統領になると、またすべてが変わります。プーチンは2013年、シリア問題で早速アメリカとケンカ。2014年にはクリミアを併合して、またアメリカとケンカ。それで、アメリカ欧州日本から経済制裁されるようになり、今に至っています。

中国はどう動いたか?中国は、制裁に加わらなかっただけでなく、クリミア併合を一言も非難しませんでした。さらに、ロシアからの石油・ガス輸入を大幅に増やしてロシア経済を救った。これ、「欧州よりもメチャクチャ安く買っているのでしょ?」とい突っ込む人もいるでしょう。そうなのでしょう。それでも、制裁で苦境に陥ったロシアを支えているのが中国であることに変わりありません。

考えてみてください。日本は、対ロシア制裁に加わっている。中国は、制裁に参加せず、ロシアを非難せず、経済を助けている。ロシアから見ると、日本と中国、どっちが大事?もちろん中国でしょう

数年前、「龍馬プロジェクト」の神谷先生と、日本一のカリスマ政治ユーチューバーKAZUYAさんがモスクワにきました。「一番驚いたことはなんですか?」と聞くと、神谷先生もKAZUYAさんも、「ロシア人に日本と中国どっちが大事ですか?」と聞くと、皆口をそろえて「現状なら中国を選ばざるをえない」と答えていたことに驚いたといっていました。

そうなのです。これが事実です。しかし、日本ではどういうわけか、「ロシア人は中国を嫌っている両国が同盟関係になることはありえない!」などと信じている(既述のように、嫌いでも同盟を組むことはあります)。

実をいうと、中国とロシアは、05年から19年まで14年間事実上の同盟関係にある(より厳密にいうと、米ロ再起動時代09~12年、中ロ関係は停滞したが)。

ロシアは、米中戦争で、中国側につく

こんな背景を踏まえたうえで。6月5日習近平とプーチンがモスクワで会談しました。

中ロ首脳が会談、対米で共闘確認 大阪G20へイラン情勢など協議
6/5(水)21:28配信

 

【モスクワ共同】中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は5日、モスクワで会談した。イランや北朝鮮情勢を巡り意見交換。中国、ロシアともイラン核合意から離脱して制裁を発動した米国を批判しており、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)を今月末に控え、対米方針で共闘を確認する。

 

プーチン氏は「両国関係は前例のない水準に達した」と強調。習氏は「国際課題への中ロの提案をさらに増やしていく」と述べ、連携強化を訴えた。

対米方針で共闘を確認する」。

まさに、これですね。仲の悪かった中ロがひっついた。その理由は、「アメリカが中ロ共通の脅威だから」です。それで私は昔、「アメリカは幕府、外交上手な中国は薩摩藩、過激なロシアは長州」という話をしていました。そして、「中国ロシア同盟」が成立した時、「これは悪の薩長同盟だ」と書いたものです。

2018年米中戦争がはじまりました。中国はロシアを取り込んでアメリカと戦います。一方のアメリカ。ルトワックさんやミアシャイマーさんのような賢人たちは、「ロシアを取り込んで中国に対峙せよ」とアドバイスする。しかしアメリカは、親ロシアのトランプと反ロシアの議会が対立し、ロシアを懐柔できない状態にある。

ルトワックさんは名著『自滅する中国』の中で、日本がアメリカとロシアの仲介をするようにアドバイスしています。しかし安倍総理は、「任期中に島を取り戻す」というとても重要ではありますが、「戦術的課題に固執して日ロ関係を悪化させている。

常識的に考えてみてください。アメリカは、中国とロシア両方を敵にまわして勝てますか?アメリカは、今よりもっと強大だった70年代ですら、「中ソと同時に戦うのは無理だ」と知って、中国を取り込むことにした。その前アメリカは、ナチスドイツに勝つために、悪のスターリン・ソ連と組んでいます。

残念ながら今のアメリカは、まったく「戦略的とはいえません。欧州とケンカし、イランとケンカし、ロシアとケンカし、中国とケンカしている。

アメリカが米中戦争に勝ちたければ、欧州と和解し、イランと和解し、ロシアと和解し、中国と対峙しなければならない。

簡単な話です。欧州と貿易戦争などしなければいいイラン核合意にとどまればいい(IAEAは、「イランは核合意を守っている」と報告している)。「ウクライナとジョージアは、NATOに加盟させない」といってロシアとディールすればいい。ところがトランプさんは戦略下手」なので、日本以外のすべての国とケンカして、孤立の道を進んでいます。

私は、もちろん「米中戦争でアメリカが勝利すること」を願っています。そして、「勝利すると予測しています。しかし、もう少しスマートな大統領であれば、「楽勝」なのにとも思います。ところが、「スマートな大統領」がいないのですね。民主党の最有力候補が親中の老バイデンさんとは…。トランプさんの方がまだマシに見えてしまいます。

いろいろ話しましたが、私は何がいいたいのか?

「ロシアは、中国を嫌っている。中国とロシアが組むことなどありえない!」という日本で一般化されている説は、【大いなる勘違い】です。

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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