金融庁「老後2千万」報告書をよく見て判った我々の未来のヤバさ

 

また、「資産寿命」という言葉が出てきます。「資産寿命」とは、老後の生活を営むにあたって、築いてきた預貯金などの資産が尽きるまでの期間のことで、長く生きるためには、よりお金が必要となるため、資産寿命を延ばすことが必要…としています。そのためには、

  • 資産を「見える化」すること
  • 各々の状況に応じて支出の再点検すること

さらに、高齢社会では、認知・判断能力の低下は誰でも起こりえるので事前の備えが重要ということも書かれています。

そして、問題になった文章ですが、

老後の収入の重要な柱であり続ける公的年金については少子高齢化という社会構造上、その給付水準は今後調整されていく見込みである。

…と。ようは、だんだん年金は減らされ支給開始年齢も上がるということで、そうなるであろうということは、漠然と感じていても、これをはっきり言われたら、国民感情(特に若い人たちの感情)としては、聞き流せないはずです。

また、報告書には、

人生100年時代というかつてない高齢社会においてはこれまでの考え方から一歩踏み出して、資産運用の可能性を国民一人一人が考えていくことが重要ではないだろうか。

とありますが、この書き方には、個人的には、「余計なお世話で、資産運用というようなことに不慣れな高齢者が、また、投資詐欺に巻き込まれたらどうするの…」と思ってしまいました。さらに、自宅と言う資産をどう老後に生かすかという視点が、入っていません。

このように、個人が置かれている状況が考慮されずまとめられた報告書ですから、突っ込みどころがたくさんありますが、それぞれが自分の人生設計を考えるきっかけにはなると思います。

しかし、金融庁が、働き盛りの人の不安も、すでに年金生活をしている人の不安もあおるような報告書を発表するというセンスはどうもわかりません。資産運用を進めたいのであれば、年金問題とは切り離して年代や状況にきめ細かく対応した資産運用方法の事例を示せばいいだけだと思うのですが…。

高齢社会のグランドデザインは、議論を避けたたり、一時しのぎの誤魔化しではなく、省庁の壁を越えて、政治と行政の壁も越えて、国民が一体になって、考えていくべきテーマです。たとえ、それそれに痛みが伴っても、それでも誰もが未来に希望を持てるように…。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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