医療不信の拡大とビジネス化
最も大きな要因は医療不信です。個々の医師や医療機関だけでなく、各国政府や国際機関の医療政策に対する信頼の低下です。この医療不信を加速させたのはフェイク情報です。イタリアのポピュリスト政党は反ワクチン主義を提唱し、医療不信を煽っています。最近、WHOは世界の人々での10大健康脅威を発表しましたが、ワクチン未接種の拡大も一つの大きな脅威としてカウントされています。
医療不信は特別な宗教団体からも発せられています。タイで2018年に麻疹死亡者が22人が記録されたのは、南部のイスラム教地域でのワクチン未接種エリア(ポケット地域と呼びます)からでした。アメリカのいくつかの州でみられている流行も、ワクチンを否定する宗教集団から出ています。
医療不信を政治利用するだけでなく、ビジネス利用するグループが世界中に出没しています。ワクチン関連情報を欲しがる人々からのアクセスを稼ぎ、ビタミンC製剤などの商品を売るビジネスモデルを成立させています。このサイトでは、ワクチンを打たなかった子供が病気になったときに行うべきことはビタミンCの点滴注射であると親たちにアドバイスしています。恐ろしいフェイクです。
日本の医療不信を増大させた医師
日本では、近藤誠氏がワクチン有害説を唱えた本を出版して医療不信を深刻化させています。近藤氏は、医師としてのプロフェッショナリズムに欠けた行為を重ねており、道徳的責任は重いと思います。
一方ではまた、反ワクチン主義グループを批判するまた別の「反反ワクチングループ」が出現しています。これらのグループは、陰謀説を唱えており、反ワクチン主義は共産主義や社会主義者がもくろむ陰謀である、としています。 その狙いは、ワクチンの議論を政治利用して、特定の政党の支持を低下させようとするものです。日本の大手出版社が発行する雑誌や新聞の全国紙にもそのような論調の論文や記事をみかけるようになりました。うねりのように押し寄せるフェイクの脅威に対して、科学的エビデンスと道徳的正義を守るために、フェイクを指摘し、ファクトを提供する行動がますます必要であると考えます。
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