疑似体験が進化しても、切り傷と火傷の痛さと熱さはわからない件

 

ここで少しばかり話を換えるが、自分には知り合いになった人に必ずする質問がある。それは「今までに刃物で手や指を切ったことがあるか」という質問と「今までにやけどをしたことがあるか」という2つの質問である。状況的に差し障りがありそうな場合を除いて高校1年の時からずっと続けている質問なのだが、答えは両方とも「yes」が100パーセントである。どんなお嬢様でも、どんな乱暴者でも変わらずにである。

極めて私的なリサーチの結果だから何の役に立つ訳でもないが、この事実には何だか気持ちをほっとさせるようなおかしさを感じるのである。おそらく我々人類の祖先が他の動物種と明らかにその進化の行方を分かつべく最初に手にした利器が刃物と火であったろう。

その、人類を人類たらしめた2つの利器にはどれだけ進化を重ねても、痛さと熱さを以て知る他ないという皮肉がこの上もないユーモアに思えてならないのである。どんなにVRやARの世の中になってもこのことだけは何故か変わらないような気がするのである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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