吉本問題が示した、芸人への不寛容と芸人風タレント増産の絶望感

 

吉本所属芸人の鉄板ネタの「親族に吉本に入りたいと言う人がいたら全力で止めて下さい」的な言い回しももう笑えない。さらにこの事件が今後、一部の芸人の間でタブー視すべきことにでもなったらもう笑いどころではない。想像するだけで息が詰まる。

言うまでもないことだが、芸人だって人間である。人間である以上は人権がある。当然、謝罪や弁明の機会が与えられて然るべきであろう。しかし人間として振る舞った以上は、人間としての同情を集めることはできたとしても、芸人としての笑いを得ることはできない。だから(自分としては)もう笑えないのである。

しかしそう思うと「死ぬまで芸人」というのは全く恐るべきことである。所謂「大物芸人」なるものの存在が異常なまでに大きく思える。これはちょっと考えたくないことだが、もしかしたら芸人というものを一つの生き様として認め続けることに世の中自体が不寛容になってしまったのかもしれない。

そもそも反社会と非社会は全く違う。芸人は普通っぽくないという意味においては非社会的存在であると言えないこともない。ただそれを普通っぽくないからという理由でそのまま許容することができず、悉く定型社会の中に無理にでも折り込んで表見的には普通の人であることを強要したところで毒にも薬にもならない芸人風タレントが出来上がるばかりである。そんな芸能界はきっと退屈だろう。つまらないだろう。笑えないだろう。

我々は一人では笑えない。だから「お笑い」が好きなのである。芸人として生きることを選んだのなら、せめてこのことだけは忘れないでもらいたい。

image by: © 内閣官房内閣広報室 [CC BY 4.0], via Wikimedia Commons

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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