【書評】祟られてもいい、出てきてくれ。霊感なし芸人の異界巡り

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以前掲載の「【書評】1K6畳、27000円。事故物件に住んだら人間はこうなる」の著者で「事故物件住みます芸人」を自称する著者が、今度は心霊スポット探訪記を上梓し静かな話題となっています。行く先々でどんな事が起きたのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしています。

偏屈BOOK案内:松原タニシ『異界探訪記 恐い旅』

91k+PPE6n2L

異界探訪記 恐い旅
松原タニシ 著/二見書房

「事故物件住みます芸人」を名乗る著者が、異界(と称する場所)に行って体験した不思議な話、なんでもない話を200本以上並べた厚めの本で、小口まで黒いから不吉この上ない。著者は決して霊感の鋭い人ではない。こわがりだが、恐怖を乗り越え、必ず真夜中に、次々と心霊スポットを訪れる“根性”のある芸人。仲間と一緒のときもある。その模様をスマホから生配信しているらしい。

一人で行った高知県の星神社。「なんておぞましい光景だ。これは、きっと祟られる。すぐさま後悔が押し寄せ、その場から動けなくなった。僕は何をしているんだろう。僕はいつだって目の前の恐怖を肯定して乗り越えてきた。そうだ、祟られたっていいじゃないか。この絶望感を経験すれば、この先これ以上の恐怖や後悔はないのだから。瞬間、不思議と本当に何も怖く感じなくなった」

そこから“無双”モードに入った著者は、何を見ても怖くない。数分前まで自分のではない足音に恐れ戦いていたはずの階段を、スイスイ上がる。境内に着いた。簡易トイレに駆け込み、思い切り放出した熱い尿。「僕は生きている」と感激する。初めての単独行の体験が、著者に大きな勇気を与えてくれた。

岡山県の東山斎場。レンタサイクルで着いたのは、地元で有名な心霊スポット。そんな所に午前4時に行き、「骨上げ待機所」と書いてある部屋の前で煙草を吸う。背後からドンドン!と叩く音がする。著者は反射的にその場から逃走。斎場は墓地で囲まれている。ここには下半身のない老婆の霊が、ものすごいスピードの匍匐前進で追ってくる「ひじかけばばあ」の噂が。会えなかった。

1月4日に京都の伏見稲荷大社へ。広大な霊山・稲荷山を真夜中に一人で登る。鳥居のトンネルが延々と続く。真夜中のお狐様(こわいな~)の前にろうそくの火が常に燃え続けている熊鷹社~三ツ辻~四ツ辻~一ノ峰までの長い急勾配。途中で数メートル先に青い服の男が歩いていたが、目の前でスッと鳥居と鳥居の隙間に入った。そこまで行って見ると石灯籠しかない幽霊だったらしい。午前4時に稲荷山頂上の一ノ宮到着。所要2時間。正月早々何してんだか。

著者は噂の危険ゾーンへ、霊を挑発して呪われるために赴くわけではない。敬意を払ってお邪魔させてもらい、それで目の前に幽霊が現れてくれたらうれしい、呪われてしまったらそれはそれでいい、という人である。怪異とされるものの謎を自分の目で確かめないと気がすまないというだけだが、興味や信念のために故人や誰かの思いを踏みにじってはいけないという自覚は持っている。

1ページの物件もある。数ページを要するのもある。必ず写真があるが、まあアリバイという程度だ。一方、生配信の視聴者が「今すぐ逃げないと危ない!」「霊が怒っている!」と必死に警告するが、著者にはそれが分からないのでその場に留まり様子見している。自分で感じたものを自分で見たものを信じたいなにか現象を起こして欲しい危険だと思ったら逃げるだけだという。

「亡くなったはずの人が現れた場所に自分が行くことで、僕は不思議な現象を現実の延長戦上につなげたいと思っている。あの世とこの世がつながれば、過剰な不安や恐れで閉塞したこの世界が、もっと広がるのではないか、そんな希望を持っている」って、本気で言ってるのかね。祟られたっていいじゃないかなんて嘯く著者は相当に鈍感だが、きっとそのうち本当の痛い目に。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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