隣り合った2つの国が、長い歴史の中で複雑な確執を抱えるというのは、世界には色々な例があります。ギリシャとトルコ、英国とアイルランド、インドとパキスタン、エジプトとイスラエルといった組み合わせについては、多くのアメリカ人は「確執の理由」を何となく知っていると思います。
そうした事例と比較すると、日本と韓国の「仲たがい」は、理解できないし、不可解という感じがあるようです。そんなわけで、今回の状況についてアメリカの世論の深層では極めて冷静に見ているという印象があります。反対に、そのような世論を抱えた米国にとっては、本件は軍事・外交当局以外には当事者意識は極めて希薄であり、回り回って調停や圧力を期待するのは難しいとも思えます。
ですから、韓国の動向が一進一退となるのを必死にモニターする中で、アメリカから韓国批判らしいコメントが飛ぶと、「援軍だ」という感覚で安堵したり、といった「疲れる長期戦」を叩くのは賢明ではないと思います。そもそも、あまり格好の良いものではありません。日本側もそうですが、韓国側もそうです。
ちなみに、韓国側からはここ数日、驚くべきニュースが入ってきています。以前に、村上龍氏が編集されているメルマガ「JMM」でご一緒していた、韓国人で日本語・日本文化の研究家であるアン・ヨンヒ氏が、昨日付けで「文在寅政権がGSOMIAを破棄した本当の理由」という興味深いレポートを寄稿しておられます。このレポートによれば、韓国では8月22日まで毎日のように、ある政権与党がらみの政治家のスキャンダルが話題になっていたのだそうです。
それは、チョ・グク法務大臣候補に関する問題で、特に娘の大学への不正入学疑惑は、世論が「沸騰する直前」まで来ていたようです。この問題については、李正宣氏による別記事、「韓国国民の怒りの矛先、日本よりもチョ・グク疑惑へ」も詳しいのですが、要するに「法律の最高責任者になる」法務大臣候補が、受験地獄で有名な韓国において、世論が極めて敏感な「不正入学」に関与していた可能性があるわけです。その与党政治家のスキャンダルを隠すというのが、今回の協定破棄のタイミングに関係しているという見方です。
このアン氏と李氏の解説も、勿論、「文政権のアキレス腱暴露」という感じで、日本側で炎上させては逆効果なので、あくまで冷静に対処すべきです。そうではあるのですが、何れにしても、とにかく日韓がしっかり向き合って、冷静に問題を処理していかないと、米国としては、「在韓米軍撤退」から「在日米軍撤退」へというドラスティックな動きを始めないとも限りません。
その米国では、とにかくこの「GSOMIA破棄」問題は、ほとんど報じられていないわけで、そのことを前提に、とにかく両国の政権当事者、そして世論の沈静化を望みたいと思います。
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