狙いは北極。トランプが「グリーンランド買収」を口にした裏事情

 

北極の環境・資源を守る枠組み

このまま放っておけば、北極はロシア・中国vs米国を軸とした開発競争の主戦場となってしまう。それを防ぐには、「北極評議会」という多国間の枠組みを活用して、資源掘削をはじめ開発の抑制とそれによる氷や凍土の急速溶解の食い止め策を優先した国際合意を作り出していく必要がある。

北極評議会の加盟国は、北極圏に領土を持つロシア、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、カナダ、米国の8カ国で、圏外ではあるが評議会によって認められたオブザーバーとして日本、韓国、中国、インド、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアの8カ国がある。

トランプ政権内の対中国強硬派の中には、「中国が北極に関して准北極圏国家などと名乗っているのは生意気だ。そんな概念は存在せずただオブザーバーという椅子があるだけだ。偉そうなことを言うなら中国を北極問題の意志決定から除外すべきだ」との意見もあると伝えられる。一説では、対中国強硬派のブレーンからその意見を聞いたトランプが「それなら、中国が手を出せないようにグリーンランドを買ってしまえばいいじゃないか」と思いついたのだとも言われる。

しかし、いずれにしてもそのようなやり方では、地球・人類に残された最後のフロンティアとも言える北極の保全と活用のバランスのとれた方策を見出す道は閉ざされて、取り返しのつかない事態に突き進んで行く。まだ20世紀的な覇権争いの泥沼を続けるのかそれとも21世紀的な多国間協調による秩序形成に向かうのかの試金石の1つが北極と言える。

image by: Shutterstock.com

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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