タランティーノ最新作を観た軍事アナリストが監督に聞きたいこと

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日本では8月30日から公開されているクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を鑑賞し、「この作品はタランティーノ監督による『復讐劇』としてみると、面白い」と、感想を語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんはネタバレにならない程度に自身の見解と疑問を綴っています。ですが、鑑賞予定があってネタバレが気になる方は、鑑賞後にお読みになることをオススメいたします。

タランティーノの「復讐劇」

クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観てきました。ストーリーは、私がくだくだ書くより、以下の読売新聞(9月5日)を引用させていただきます。

「主人公は落ち目の俳優リック(レオナルド・ディカプリオ)と彼のスタントマン・クリフ(ブラッド・ピット)。思うような仕事がなく悩むリックに対し、クリフはどこか超然としている。対照的な2人の友情物語が描かれる。(中略)

物語の背景にあるのは、69年8月に、女優のシャロン・テートが狂信的な集団に殺された事件。本作では、シャロンと夫のロマン・ポランスキー監督がリックの家の隣に引っ越してきて、虚実入り交じった物語を展開。悪夢のような現実と、古き良きハリウッドの夢が拮抗(きっこう)して、思いがけない結末に至る」(9月5日付 読売新聞)

そこで私の出番ですが、この作品はタランティーノ監督による「復讐劇」としてみると、面白いと思います。

監督とシャロン・テート、ロマン・ポランスキーとの関係はわかりません。手に入る情報は、少女淫行事件で有罪になったポランスキー監督を擁護して世論から袋だたきになった過去があったことくらいでしょうか。事件当時6歳だったタランティーノ監督が、両者と接点があったとも思えません。

しかし、監督は明らかに事件を起こしたマンソン・ファミリーを憎悪していたと思われます。それは作品の中で、そこだけが異質と感じられるほどリアルかつ残忍な方法で、犯人たちが殺されていくシーンを見ればわかります。ネタバレになるので、以下のようにしか書けませんが、とにかくリアルなのです。

拳銃であっさり殺されたチャールズ・マンソンはともかく、妊娠8ヵ月だったシャロン・テートのお腹を切り裂いたとされるスーザン・アトキンスについては、これでもかと言わんばかりに顔面を家具の角などに打ち付け、おそらく原形をとどめない状態にして殺します

もう一人の女は、傷だらけになってプールに落ちたところを、火炎放射器で焼き殺されます。むろん、マンソン・ファミリーが惨殺される場面は完全にフィクションです。

実際には、主犯のアトキンスとマンソンには1971年に死刑判決が下されたものの、カリフォルニア州での死刑一時撤廃を受けて終身刑となり、アトキンスは38年間服役したあとの2009年、カリフォルニア州の刑務所で脳腫瘍のため死亡、マンソンも服役46年後の2017年に死亡しています。

タランティーノ監督は、この生き延びた2人、あるいは3人の主犯に対して、「殺してやりたい」という気持ちの赴くままに、作品の中で殺して見せたのです。死刑にならなかった犯人たちを、天に代わって成敗する──。

これは、事件を憶えている米国民の多くの気持ちを代弁したものでもあったでしょう。それとも、そんなことに関係なく、監督自身の「私怨」によるものだったのか。単に映画を面白くするための殺害シーンだったのか。インタビューする機会のある人は、質問をぶつけてみてはいかがでしょうか。(小川和久)

image by: Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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