今回もそうですが、気象庁が悩みながら試行錯誤をして頑張っているのは事実だと思います。ですが、どう考えても特別警報というのはおかしいと思います。
まず「少しでも命の助かる行動を」というフレーズがここ数年「発明」されていますが、おかしいと思います。そんな日本語はないからです。まるで遭難覚悟で風雨に打たれてさまよっている人に天の声としてアドバイスしているような感じで、ニュアンスが意味不明だからです。人によっては「オレは自分の命は自分で守る、大きなお世話だ」というような反発を食らうかもしれません。
だったら具体的に「ハザードマップと、河川水位、放流計画を考えて、危険ならすぐに逃げろ」とか「累積降水量が危険レベルに達して裏山が危なそうなら逃げろ」とした方が伝わるのではないでしょうか?
その前に、もう風雨が強まっていていたり、日没後となって場合によっては避難が危険になっていることを分かった上で、逃げられなければ垂直避難をなどというのを含めて絶叫調でやるというのは間違っていると思います。
絶叫調で避難を呼びかけるのは、台風接近で風雨が出てくる前、公的交通機関や道路が機能しているうちに行うべきです。
アメリカやカリブ海などのハリケーンが頻繁に来襲する地域では、予報円を見て「上陸可能性の48時間から72時間前に知事が非常事態宣言をする」のが当たり前になっています。非常事態宣言とは「ハザードマップで避難対象の場合は強制避難命令」ですし、道路や公的交通機関は「被災12時間から24時間前をメドに遮断」するのでその前に避難せよとか、その遮断タイム以降は緊急車両以外は通行止にすると言った戒厳令並みの対応です。
日本の場合は、政府に裏切られて戦争に負けた経験があるので、戒厳令並みとかいうと、「お上と庶民のバトル」感覚から反発を食らうのかもしれませんが、だからと言って風雨が強まってから「特別警報」というのはナンセンスだと思います。
そもそも気象庁にしても「特別警報が出る前に避難を」とか言っていますが、だったら風雨が来る前に特別警報をどうして出さないのか、理解に苦しみます。
その結果として、特別警報が出たら「命を守れ」などと叫びながら「危険なら避難しなくてもいい」などという意味不明のメッセージになるわけです。
アメリカでは、NHKの報道しか基本的に見られないので、民放各局の対応はわからないのですが、NHKに関していえば、基本的に三連休モードで対応していたのは問題だと思います。エース級は、13日の高瀬耕造アナ、12日の斉田 季実治予報士、13日の南利幸予報士ぐらいで、その他は主力級ではありませんでした。
これだけの国家的危機なのですから、三連休とか働き方とかいうのは一時的に返上してエース級による高度なアナウンスで被災者や全国の人々に安心を届けていただきたいと思ったのです。
エース級が出ていないということでは、恐らくディレクターもエース級ではなかったようで、どうにも危機感が不足していたように思います。
例えば、今回は河川の氾濫が大きな被害をもたらしたわけですが、降雨時点での雨雲レーダー、そしてのその後の河川の水位情報、そして放流計画を重ねて行けば、各河川ごとの危険は特定できるはずです。そうした情報は、勿論今後はネットでリアルタイムで提供できるようにすべきですが、その前に、NHKなどの公共放送が頑張って伝えるべきと思います。今回はそれが不足していたように思います。
そう考えると、NHKとして全国の主要河川にモニターカメラをどうして設置しないのか理解に苦しみます。河川の水位だけでなく、ハザード箇所は全部モニターカメラ、しかも可動式にして迅速にリアルタイムの映像を出せば、もっともっと切迫感が伝わって、助かる人も増えたのではないかと思うのです。