後は、報道姿勢の問題です。例えば、台風15号で被災した館山では避難所が満員になったという報道がありましたが、信じられません。そんなのは当たり前だからです。問題は、避難所が満員になることではなくて、避難していない人が問題なのです。そうしたケースがないかどうか、徹底的に取材して警告を出していくことが必要で、報道というのはそうした使命があるのだと思います。
報道の使命ということでは、危険を冒して報道すると批判されるという風潮があって、まだ台風が接近もしていないのに「ヘルメットかぶって、安全な場所から報道しています」などというのは、とにかく信じられません。風雨が強くなっても、ノウハウと装備があり、警察や消防当局と協力して取材すれば安全は確保できます。その上で、これは大変だ、これは避難しなくちゃいけない、これは助けに行かなくちゃいけないという切迫感のある映像を届けることが必要で、日本の各TV局はいつからその責任から降りてしまったのでしょうか。
一番腹がたつのは、まだまだ河川が増水していて、土砂災害のリスクも続いているのに、チャイムを鳴らしたり「ここで速報が入りました」などと言って「大雨特別警報が解除された」ことを報道するということです。
勿論、そこでは「大雨特別警報が解除されても危険は続く」という説明はあるのですが、危険が続くのならどうして警報を解除するのか、それが気象庁の科学的定義で仕方なくやっているにしても、どうしてチャイムを鳴らして、ここで速報ですなどと言って「解除報道」をするのか、全く意味不明です。怒りしか感じません。
後は、被災の後の報道で「詳しいことはわかりません」というコメントが多すぎるのが気がかりです。過疎化すれば地方自治体の税収は細くなり、要員も削減されます。その結果として、被災状況の把握が難しく、結果的に救援も遅れがちになるわけです。
とにかく地方自治体の疲弊、弱体化は明らかなのですが、例えば全国的に組織力があり、資金も潤沢なNHKなどが率先して被災状況の徹底的なローラー調査などを行なってはどうなのでしょうか?このままでは、東日本全体が南房総になってしまうように思うのです。
いずれにしても、今回の台風被災にあたって、報道にはいくらでも工夫する余地があり、もしもそうした工夫が実現できるようなら、例えば土砂災害にしても、家屋の浸水にしても、犠牲者を減らすための効果はあるように思います。
image by: Shutterstock.com