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いきなり!ステーキ、売上35%減の大ピンチ。業績悪化3つの敗因

「いきなり!ステーキ」の業績悪化に歯止めがかかりません。一時はまさに飛ぶ鳥を落とす勢い、客足が途切れることが無かった「いきなり!ステーキ」ですが、何が不振を招いたのでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、同社のみならず外食チェーンが軒並み厳しい状況に追い詰められた原因を探るとともに、そこから脱却するため打つべき施策を考察しています。

いきなり!ステーキ、8月売上35%減

ペッパーフードサービスが運営する「いきなり!ステーキ」が深刻な状況だ。8月の既存店売上高は前年同月比35.2%減と大きく落ち込んだ。前年割れは17カ月連続。しかも、悪いことにマイナス幅は拡大している。18年4月からマイナスが続いているが、18年4~12月の各月のマイナス幅は大きい時でも13%程度に過ぎなかった。しかし、19年1~6月は各月20~27%減とマイナス幅は拡大している。そして7月は29.6%減と大きく落ち込み、8月はさらに落ち込んだ。こうしてみると、月を追うごとに悪化していることがわかる。

「いきなり!ステーキ」の業績が悪化している原因として「ブームが去った」「値上げ」「自社競合」の3つが挙げられる。

「いきなり!ステーキ」は13年12月に1号店が東京・銀座にオープン。立ち食いスタイルを取り入れたこともあり注目を集めた。その後出店を加速し、店舗数は大きく増えた。メディアに取り上げられる機会も多くなり、注目度はより高まっていった。ただ、それも一服し、ブームが去った感はある。それにより顧客が離れていった感が否めない。

これまでに実施した値上げも影響しているだろう。値上げにより割高になり、それを敬遠して「いきなり!ステーキ」に行かなくなった客は少なくないとみられる。

自社競合も大きく影響した。「いきなり!ステーキ」は早い段階から出店攻勢をかけ、店舗数が一気に増加。18年4月から17カ月連続で既存店売上高がマイナスとなっているが、18年3月末時点の国内店舗数は234店に達していた。その後もどんどん店舗を増やしたが、それにより自社の店舗同士で客を奪い合うケースが増えていった。これが既存店売上高の低下につながっている。

自社競合については8月18日に閉店した「いきなり!ステーキ 君津店」(千葉県君津市)がわかりやすい例となるだろう。同店から車で約15分のところに「木更津店」(同木更津市)、同約20分のところに「イオンモール富津店」(同富津市)があり、これら3店舗間で客の奪い合いが起きた。こういった自社競合が増えている。

このように「いきなり!ステーキ」は厳しい状況にあるが、不振の外食チェーンは「いきなり!ステーキ」だけではない。

ラーメンチェーン「日高屋」を展開するハイデイ日高も厳しい状況にある。既存店売上高は9月まで11カ月連続でマイナスだ。「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスも厳しく、9月まで8カ月連続でマイナスとなっている。リンガーハットの長崎ちゃんぽんもマイナスが続いており、19年3~9月累計は前年同期比2.5%減だった。このように苦戦を強いられている外食チェーンは少なくない。

これら外食チェーンが苦戦を強いられている背景として共通しているのが「値上げ」だ。ハイデイ日高は18年4月に一部メニューを10~30円引き上げた。これ以降、既存店売上高の苦戦が鮮明となった。大戸屋は定期的に価格帯を引き上げており、例えば今年4月に定食メニューの12品目を10~70円値上げしている。リンガーハットも定期的に値上げを実施している。18年8月には13品で平均3.3%値上げした。大戸屋もリンガーハットも値上げ後の既存店売上高は低迷している。

近年は食材費や人件費の高騰で多くの外食チェーンの収益が悪化している。体力がないところは価格に転嫁せざるをえないが、客が移ろいやすい外食業界では客離れにつながりやすい

特に近年は飲食店では少しの値上げでも顧客が流出しやすくなっている。以前は業界内だけで顧客の奪いをしていればよかったが、近年はコンビニエンスストアが台頭しており、コンビニとの顧客獲得競争が激化しているためだ。また、スーパーも食品販売を強化している。こういった「中食が外食の大きな脅威となっている。

外食市場は伸び悩んでいる。日本フードサービス協会によると、18年の外食の市場規模は17年比0.3%増の25兆7,692億円。7年連続で前年を上回ったが、ここ数年は伸びが鈍化しており、伸び率が1%に満たない年が続いている

一方、中食市場は大きく伸びている。日本惣菜協会によると、18年の中食の市場規模は17年比2.0%増の10兆2,518億円で9年連続で前年を上回った。08年から17年の10年間では22.3%増えたという。大きくけん引したのがコンビニで、18年の購入場所別の割合は32.3%と最も多く、17年比2.4%増の3兆3,074億円だった。

このように中食市場が大きく拡大しており、外食各社はかつてない危機にさらされている。わずかな値上げでも顧客が流出してしまう経営環境にあるのだ。

吉野家に学ぶ「商品力の強化」

こういった状況下でやるべきことは、「差別化の徹底一層のコスト削減」の2つだ。

なぜ外食チェーンでちょっと値上げしただけで顧客流出が起きてしまうのかというと、外食チェーンは商品などの差別化の度合いが弱くなりがちな業態だからだ。差別化の度合いが弱ければ他で簡単に代替できるため、「価格が高くなったから他に行こう」となりやすい。そのため、顧客の流出が起きやすいといえる。

差別化を図るには商品力の強化が欠かせない。ヒット商品を生み出していくことが求められる。これは、牛丼チェーンの「吉野家が良い例となるだろう。吉野家の既存店売上高は伸び悩んでいたが、19年3~8月期に牛丼の新サイズの「超特盛」やRIZAPとのコラボ商品「ライザップ牛サラダ」、サーロインを使った「特撰 すきやき重」などがヒットし、同期の既存店売上高は前年同期比6.9%増と大きく伸びた。こういったヒット商品を生み出すことが欠かせない。

一層のコスト削減も必要だ。値上げをしなくて済むよう、もしくは値上げしたとしても値上げ幅が小さく済むよう、コスト競争力を高めて利益を確保できるようにしておくべきだ。

このように差別化の徹底と一層のコスト削減が重要となるが、もちろん各社、手をこまぬいているわけではない。

「いきなり!ステーキ」は店舗閉鎖や業態転換で自社競合の解消を図っているほか、5月から一部店舗で牡蠣(かき)の販売を始めるなどメニューで差別化を図ったりしている。

日高屋は10月1日から主力商品のギョーザを刷新して販売を始めた。皮は薄いものを使い、クリスピーな食感を出すようにした。豚肉を増量しながら脂分は減らしている。女性に訴求できるものになっており、新たな顧客層の開拓が期待できる。

大戸屋は10月1日に外食大手のコロワイドから出資を受け、経営の立て直しを図る考えだ。コロワイドが持つ経営資源を活用できれば、コスト削減や販売拡大が見込めるだろう。

リンガーハットは8月からランチメニューを刷新した。一部のメニューを10円値下げしたほか、税別370円のギョーザ定食など5種類のメニューを追加した。リンガーハットは18年まで3年連続で値上げを実施して客離れが起きていたが、お得感のあるメニューを投入し、客足の回復を狙う。

これら各社は厳しい状況に置かれているが、こうした施策を実施し、事態の打開を図りたい考えだ。

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image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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